2 / 134
何も見えていない婚約者
しおりを挟む
堂々と他のご令嬢を抱き寄せながら、婚約者を貶す。
はっきり言って、ロクでもないと思う。
この王太子、容姿と身分は優れているけど、頭の中は空っぽだ。
大体、私が望んだわけでもない婚約なのだ。
王家が聖女である私を国外や他の貴族家に渡したくないから、無理矢理結んだ婚約なのだ。
そこを何故当人の王太子が理解していないのだろう。
それに、見た目で聖女が決まるわけがないだろうに。
聖女の中には、孫もいる年齢の方もいる。
容姿も極々普通の方だ。
物語の聖女のように、純潔でなくなれば力が失われるなどということはない。
そんなことがあるなら、王太子の婚約者になど選ばれるわけがない。
聖女としての力の維持は、キチンと毎日神に祈りを捧げること。
そして、人として恥ずべきことをしないこと、だ。
ちなみに、あの王太子にべったりの公爵令嬢にも聖女の力がある。
ただし、祈りも不十分の上、私を陥れようとしている時点で、その力は微々たるものだということが分かる。
だけど、これはチャンスである。
国王陛下が決めた婚約だが、当人の王太子が衆人の前で婚約破棄を宣言してくれれば、私はこの国から逃げることができる。
筆頭聖女である私がいなくなれば、この国は大変だろうが、そんなことは私の知ったことではない。
私を売ったクリムゾン伯爵家に、教会、私を利用するために王太子の婚約者にしておきながら、大切にしない王家。
ほら、どうでもいい。
「何とか言ったらどうだ!」
「カタパルト様。きっと、カタパルト様のかっこよさに見惚れて、何も言えないんですわよ」
「マリアベルは美しい上に、洞察力も優れているのだな。さすが聖女だ。君こそ僕の婚約者に相応しいというのに、何故父上はこんな不吉な女を聖女だと言うんだか」
何故もなにも、私に力があることはあの教皇が認めたからよ。
現にそこの聖女様は、全く、ちっとも、全然、何もしていないけど、私は毎日国のために結界を張るように国王陛下から命令され、王都に結界を張っている。
治癒魔法も使えるので、毎日王宮騎士団に渡す治癒薬、いわゆるポーションの作成もさせられている。
やりたいわけではないが、これをやらないと食事をもらえない。
それに、これも祈りと同じで、日々鍛錬することで、力を上昇させることが出来るので、私自身はやること自体には文句はなかった。
そう。
この国のためにやることが不満だっただけだ。
さて。
茶番に付き合うのもそろそろやめにしよう。
この二人とは、いや、この王宮の人間とは顔を合わせているだけで不快だ。
さっさと婚約破棄を宣言してもらおう。
はっきり言って、ロクでもないと思う。
この王太子、容姿と身分は優れているけど、頭の中は空っぽだ。
大体、私が望んだわけでもない婚約なのだ。
王家が聖女である私を国外や他の貴族家に渡したくないから、無理矢理結んだ婚約なのだ。
そこを何故当人の王太子が理解していないのだろう。
それに、見た目で聖女が決まるわけがないだろうに。
聖女の中には、孫もいる年齢の方もいる。
容姿も極々普通の方だ。
物語の聖女のように、純潔でなくなれば力が失われるなどということはない。
そんなことがあるなら、王太子の婚約者になど選ばれるわけがない。
聖女としての力の維持は、キチンと毎日神に祈りを捧げること。
そして、人として恥ずべきことをしないこと、だ。
ちなみに、あの王太子にべったりの公爵令嬢にも聖女の力がある。
ただし、祈りも不十分の上、私を陥れようとしている時点で、その力は微々たるものだということが分かる。
だけど、これはチャンスである。
国王陛下が決めた婚約だが、当人の王太子が衆人の前で婚約破棄を宣言してくれれば、私はこの国から逃げることができる。
筆頭聖女である私がいなくなれば、この国は大変だろうが、そんなことは私の知ったことではない。
私を売ったクリムゾン伯爵家に、教会、私を利用するために王太子の婚約者にしておきながら、大切にしない王家。
ほら、どうでもいい。
「何とか言ったらどうだ!」
「カタパルト様。きっと、カタパルト様のかっこよさに見惚れて、何も言えないんですわよ」
「マリアベルは美しい上に、洞察力も優れているのだな。さすが聖女だ。君こそ僕の婚約者に相応しいというのに、何故父上はこんな不吉な女を聖女だと言うんだか」
何故もなにも、私に力があることはあの教皇が認めたからよ。
現にそこの聖女様は、全く、ちっとも、全然、何もしていないけど、私は毎日国のために結界を張るように国王陛下から命令され、王都に結界を張っている。
治癒魔法も使えるので、毎日王宮騎士団に渡す治癒薬、いわゆるポーションの作成もさせられている。
やりたいわけではないが、これをやらないと食事をもらえない。
それに、これも祈りと同じで、日々鍛錬することで、力を上昇させることが出来るので、私自身はやること自体には文句はなかった。
そう。
この国のためにやることが不満だっただけだ。
さて。
茶番に付き合うのもそろそろやめにしよう。
この二人とは、いや、この王宮の人間とは顔を合わせているだけで不快だ。
さっさと婚約破棄を宣言してもらおう。
86
お気に入りに追加
2,563
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
契約破棄された聖女は帰りますけど
基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」
「…かしこまりました」
王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。
では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。
「…何故理由を聞かない」
※短編(勢い)
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる