ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな

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ピンチ?囲まれた!

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 私は今、大ピンチである。

 目の前には、4人ものご令嬢たちが私を睨みつけて立っている。

 乙女ゲームの中でよく見る光景だ。攻略対象の婚約者であるご令嬢とそのご友人の方々が、ヒロインに文句を言うシーン。

 もっとも目の前にいるのは、婚約者のご令嬢方ではない。
 伯爵家、子爵家、男爵家のご令嬢だ。
つまりは、私と同等かそれ以下の爵位のお家柄ということだ。

 何故に?
攻略対象の婚約者に文句を言われるのは、嫌だけどヒロインの運命と言えなくもない。
 嫌だけど。
しかし攻略もしていないのに文句を言われたくはない。

 でも、そこは乙女ゲームという前提でいうなら理解できなくもない。

 だけど何故、無関係のご令嬢方に睨まれなきゃならないのか。

「シルヴァン様の優しさにつけこんでなんて女でしょう!」

「セドリック様に色目を使って本当図々しい!」

「ギルベイン様にまとわりついて!この売女!」

「ロメオ様のお隣に相応しいのは貴女などではないわっ!」

 いや。意味がわからない。
私は第1王子の優しさにつけ込んだりしていないし、宰相の息子に色目を使ったりもしていない。騎士団長の息子にまとわりついてもいないし、魔法省長官の息子の隣に立つつもりもない。

 本当に、攻略もしていないのに、何故そんなことを相手に言われなければならないのか。

「何とか言いなさいよ!」

 突き飛ばされそうになって、思わず避けたら、その伯爵家のご令嬢は前のめりに転んでしまった。

「きゃああああああああ!」

 大袈裟に悲鳴をあげて倒れた伯爵令嬢に、他の令嬢方は駆け寄った。

「なんて酷い!ピリカ様を突き飛ばすなんて!大丈夫ですか?ピリカ様!」

「足を捻ってしまったみたい。こんな乱暴な方だなんて!きっとシルヴァン様は騙されているのよ」

 前のめりになってタタラを踏んでたけど、足捻るかなぁ?
 すっごく嘘くさいというか仮病?
これ、相手しなきゃいけないの?

「お可哀想なセドリック様」

「こんな酷い女だと知ればギルベイン様もきっと目が覚められるわ」

「ええ!ロメオ様もきっと、こんな醜い女のことなどお許しにならないでしょう」

 自分たちに酔っているのか、はっきり言ってピーチクパーチクうるさい。

 近づかないで貰いたいのは、こっちの方だというのに。
 こんなくだらない茶番に付き合うのなんて、ごめんだわ。

「はっきり言っておきますけど、私は第1王子殿下にも、宰相様ご子息にも、騎士団長様ご子息にも、魔法者長官様ご子息にも、カケラも興味がありません。変な言いがかりはやめてもらえますか」




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