ヒロインだと言われましたが、人違いです！

あり得ない転生

「嘘でしょ」

　鏡の中の自分の顔を見て、愕然とする人間って何人いるだろう。

　昨日までの自分と全く違う顔になっていたら？
　そして、その顔がざまあ確定の乙女ゲームのヒロインの顔だったら？

　愕然通り越して絶望するわっての。

　私の名前は、風間有莉愛かざまありあ。
この自己紹介は、半分合ってて半分は違っている。
　今の私の名前は、アリア。
　乙女ゲーム『悪役令嬢に手を出すな』に出て来るヒロイン、アリア・ローズレットだ。

　普通、乙女ゲームのヒロインと言えば喜ぶところなのだろうけど、タイトルから見てわかるように、このゲームは悪役令嬢がメインなのだ。
　攻略対象たちとヒロインは、最終的に悪役令嬢と呼ばれた婚約者のご令嬢にざまあされ断罪される。

　大体、転生と言ったら悪役令嬢に転生がテッパンでしょ？なんで事もあろうにざまあされる運命確定のヒロインなの？
　私、そんなに悪いことした？転生したってことは、有莉愛は死んだってことよね？16年しか生きてないのに死んだ上に、断罪確定のヒロイン転生なんて、ひどすぎない？

　しかし、どれだけ鏡を睨んでも、転生させたであろう神様を恨んでも、目の前の顔が変わることはなく・・・

　私は大きくため息を吐いた。
一応、有莉愛の時に乙女ゲーム『悪役令嬢に手を出すな』をプレイはしている。
　ビジュアルがすごく綺麗で、好みだったのだ。

　攻略対象の４人はもちろん、その婚約者の悪役令嬢と呼ばれるご令嬢方もめちゃくちゃ綺麗ときた。

　つまりは、ヒロインである私の容姿も、とても秀でているというか、めっちゃ可愛い。
　これで断罪されるんじゃなきゃすっごく嬉しいんだけどな。

　乙女ゲームだから、ビジュアルが綺麗じゃなきゃプレイしてもらえないかもだけど、はっきり言ってあの顔面偏差値の高い連中ばっかりって、逆に辛いわ。

　しかも全員が高スペックなのよね。
顔よし頭よし、運動神経よしって、どこの世界の主人公よ。

　大体、ちょっと頼りなかったり、駄目なとこがあったりするから、人って共感して好感を持つんだよね。

　それが、非の打ち所がない高スペック。あー、でも婚約者がいながらヒロインに揺らぐから、非はあるか。

　それって好感持てるレベルの駄目なとこじゃないんだよね。絶対、駄目なやつだよね。
　だって、現世でも彼女持ちが他の娘にベタベタしたら、問題だもん。

　乙女ゲームの世界に転生してしまったことは、どうしようもない。
　私に出来るのは、攻略対象たちとその婚約者たちにも近づかないこと。

　断罪されないために。
私はヒロインなんかにならないんだ。