上 下
125 / 130

対価。

しおりを挟む
 カルドラン王国のガラス製品は、レシピエンス王国を筆頭に多くの国に受け入れられた。

 まだ若く愛らしい王女殿下が、率先してお茶会などで披露してくれた成果だ。

 王族や高位貴族が、パーティーなどで豪華な宝石を身に纏うのは当たり前のことで、安物の宝石を身につけていると馬鹿にされてしまう。

 その程度の宝石しか買えない、また審美眼がない、と見られるのだ。

 そんな中、王女殿下がガラスのカケラを散りばめたドレスに、本物の宝石のネックレスにイヤリング、ガラス細工の髪飾りを付けてパーティーに現れた。

 さすがは宝石の国の王女殿下。
魅せ方が上手ね。

 審美眼もあり、買えないわけでもない王女殿下が、ガラス細工の製品を使用した。

 そのおかげで、レシピエンス王国ではカルドラン産のガラス細工が流行し始めた。

 その対価が・・・

「お姉様!ここはどうすれば?」

「ああ、ここはこう訳すのよ」

 何故か、私がリルラ様に語学を教えるということだった。

 意味が分からないわ。
何故、他国の私がリルラ様に語学を教えるの?

 そりゃ、メルキオール帝国語は自国語だから教えては差し上げられるけど。

 それに『お姉様』呼び。

 私はお姉様はいらっしゃるけど弟妹はいないから・・・

 ちょっと嬉しいけど。

 でもが対価で良いのかしら?

 私が贈ったガラスペンを指で弄びながら、リルラ様は小首を傾げられる。

「何かわからないところが?」

「え、あ、いえ。ここは理解出来ましたわ。そうではなくて・・・お姉様とマキシミリオン王国の王太子殿下は本当にずっとお会いしていませんの?」

「え?ええ。もうすぐ三年になりますわね」

 そう。
あの約束の日から、あと一ヶ月で三年になる。

 私たちは約束を守って、この三年間一度も会っていない。

 手紙のやり取りはしているけど。

 シリルは自分の魔力の多さを利用して、新たな魔道具を開発。

 それで、メルキオール帝国の農産業や畜産業の発展に繋げた。

 逆に私は、メルキオール帝国の農産業や畜産業をマキシミリオン王国に伝授し、あの国の自給率を上げることが出来た。

 マキシミリオン王国は、魔法が発展しているせいで、農業や畜産業は他国よりも劣っているのよね。

 輸入しても賄えるものだから、どうしても優先順位が下がってしまう。

 私がマキシミリオン王国のためにできることって本当に限られてるから、これで認めてもらえるのか不安だわ。

 もちろん、外交の面で役に立つように多くの国を訪問して顔繋ぎはしているのだけど。
しおりを挟む
感想 369

あなたにおすすめの小説

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。 ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。 え?イザックの婚約者って私でした。よね…? 二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。 ええ、バッキバキに。 もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。

【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。 わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。 サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。 「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」 レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。 オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。 親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

お飾りの妃なんて可哀想だと思ったら

mios
恋愛
妃を亡くした国王には愛妾が一人いる。 新しく迎えた若い王妃は、そんな愛妾に見向きもしない。

処理中です...