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帝国は必要ないということかしら。

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「あら?ならその姫君と婚約なされば?私はかまいませんわ」

 胸の奥がツクン!と痛むけど、それでも家族や帝国民を馬鹿にされるような作戦には乗れないわ。

「クロエっ!」

 バターン!と扉が跳ね返って開けた本人に当たる勢いで開いたと思うと、シリルが部屋に飛び込んできた。

 話し合いには邪魔になりそうだから、置いてきたのだけど。

「別れるなんて、絶対に嫌だっ!」

「あら。でも、この作戦って、私のことを蔑ろにしていると思わない?そんなことをして、私は貴方を尊敬できるかしら?敬愛できる間柄でいることが婚約の条件でしょう?」

「そっ、それは・・・その通りだよ。僕間違っていた。考えが浅はかだった!一度だけ、一度だけ挽回の機会を与えて欲しい!」

 深々と頭を下げるシリルに、ふぅとため息を吐く。

 嫌いになれないところなのよ。

 間違いを人のせいにしない。

 自分の駄目なところを、ちゃんと反省することができる。

 私に真摯に向き合おうとする。

 そして、挽回の機会がだと理解している。

「だけどこの作戦で進めているのでしょう?どうするつもり?」

「今すぐ捕縛できないと言うのなら、兄上!兄上がパーティーであの令嬢のエスコートをなさってはいかがですか?王族が魅了魔法に引っかかったなどと、そんな醜聞を撒き散らしたいなら、父上や兄上自らがなさって下さい!」

「な・・・ッ!シリルっ!言うことを聞けないのなら、この婚約を破棄し、レシピエンス王国の王女との婚約を進めるぞ!」

 あら。
レシピエンス王国の王女殿下なのね、シリルの婚約相手。

 確かあの国は宝石の採掘で発展しているから、国王陛下はすでにルーファスお兄様で縁ができているうちより、レシピエンス王国と縁を繋ぎたいということかしらね。

 ふーん。
そのつもりだったということかしら。

 それでもシリルが頷かないから、今回の作戦を立てた?

 随分と、うちを甘く見てるのね。
ルーファスお兄様が、うちよりも自分の生まれた国を取ると思っているのね。

 ふふっ。
確かにお兄様はマキシミリオン王国を大切に思っているけど。

 お母様である王妃様や弟のシリルを大切に思っているけど。

 もうルーファスお兄様は、メルキオール帝国民なのよ?

 我が国に、お姉様という家族があるのよ?

 なのに、その家族よりマキシミリオン王国を重視するわけがないと思わない?

 そんなことをしたら、離縁してマキシミリオン王国へ送り返されるわよ。

 本当に、我が国を甘く見てるのね。

 アルトナー王国でのことが原因かしらね。
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