拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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私は道具じゃないわ。

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「そう・・・陛下たちとお話させていただいても良いかしら?」

 シリルから一週間我慢して欲しいと言われて、私は陛下たちとの謁見をシリルに願った。

 シリルは、旅行か何かの、交換条件の話だと思ったみたい。

 ええ。
まぁ、の話には違いないわ。

 すぐに陛下たちにお伺いが立てられ、私がお願いしてから一時間後に謁見が叶った。

 マキシミリオン王国国王陛下、王妃殿下、王太子殿下、王太子妃殿下が談話室で待たれていた。

「お時間をとってくださり、ありがとうございます」

「いや、こちらこそ色々と迷惑をかけて申し訳ない」

 国王陛下の謝罪の言葉に、王妃殿下をはじめ、皆様が頭を下げられた。

 一応、申し訳ないとは思ってくださってるのね。

「そのことでお話があります。一週間後のパーティーで捕縛されるとお聞きしましたが」

「あ、ああ。シリルに魅了魔法を使っていると、衆人の前で魔法師に鑑定させ、罪に問う。その功績に対する褒美をシリルが求めているが、皇女殿下も何か希望があるだろうか」

「ええ。交換条件と申しますか、お願いしたく参りました」

 あら?陛下と王太子殿下はホッとしたお顔をされてるけど、王妃殿下と王太子妃殿下は顔色が悪いわ。

 ああ。

「なんでも言ってくれ」

「では、お言葉に甘えさせていただきます。今回の捕縛が終わりましたら、わたくしメルキオール帝国にいただきますね?もちろん、シリルとの婚約は白紙撤回で」

「「「「!」」」」

 この場にシリルはいない。
いたら絶対に喚き出すから、私だけで話をすると言ってある。

 もちろん、シリルに婚約の白紙撤回の話はしていない。

 シリルに好意を感じはじめている私としては、白紙撤回をしたいわけではない。

 でもね?

 私はメルキオール帝国の皇女なの。
 
 婚約者である皇女をこんな扱いして、婚約が継続できるとでも?

 元々が交換条件で、信頼し合えることを約束して結んだ婚約なのよ?

 シリルのことを好きになったからといって、なんでも許容すると思われたら困るわ。

「まっ、待ってちょうだい!」

「お待ちください、皇女殿下!ど、どうか話を・・・」

 王妃殿下と王太子妃殿下が、真っ青な顔のままだけど、私に縋って来た。

 国王陛下と王太子殿下は・・・
あら、固まってるわ。

「私は、自分の婚約者が道具のように扱われるのを許容できるほど、出来た人間ではありません。そして、理由があろうと、婚約者の国で出席するパーティーで、婚約者が自分以外の人をエスコートするのを許せるほど優しくもありません」

 
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