拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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疑問。

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「ねぇ、シリル様!聞いてくれてます?」

 私は素直に、シリルの「近付かないで」という指示に従っている。

 従っているけど、偶に近くを通ってしまうこともあって、声が聞こえてしまったりする。

 その時に何気なく声の方を見ると、シリルにまとわりつくミリー様の姿と・・・

 全く彼女の声にシリルの姿が見えた。

 ええ?
すごいわ。完全無視なの?

「すごいですわね、あの塩対応」

「ええ。もうしょっぱ過ぎますわ」

 私の隣には、もちろんキャリーヌ様がいる。

 シリルから、絶対にどんな時でもひとりにならないようにと言われているから。

 別にキャリーヌ様が、護衛というわけではない。

 ただ、マキシミリオン王国筆頭公爵令嬢がそばにいれば、をかけられる要素が減るから、だそう。

 貴族の世界でそういうことがあることは、私も良く理解している。

 だから、素直に従った。

 シリルがあんなをしてるんだから、私のことで手間をかけさせたくない。

 それに、私は要らぬ愚者を炙り出しはしようとしてるけど、冤罪をかけられたいわけじゃないもの。

「結局、あの方の目的もシリルだったのかしら?ただの無謀で空気を読まない、正義の味方かと思っていたのだけど」

「それが・・・聞いた話だと、色恋の話じゃないのですわ。殿下に、学園で身分制度はおかしいとか、婚約者とか家と家の契約みたいなのは変だとか、理論を繰り広げているみたいで」

「・・・リグレスト侯爵令嬢様の方が、扱いやすいですわね」

 王宮でシリルとは顔を合わせるけど、なんだか疲れ切っていて、ミリー様とのこと聞けなかったのよね。

 シリルは私に、関わって欲しくないみたいだし。

 でも、そんな意味不明な理論をずっと言われ続けていたら、あの憔悴ぶりも理解できるわ。

 身分制度云々を言うということは、彼女は貴族ではないの?

 貴族は、自分がもっと上の身分だったなら!と思うことはあっても、その立場を不自然だと思うことはない。

 それは、生まれた時からそう教えられているから。

 頭の中にお花畑があった元婚約者様もファンティーヌ様も、身分制度に疑問なんて持っていなかった。

 もちろん、不満に思っている人間はいると思う。

 でもそれは「自分が高位貴族の生まれだったなら!」とか「平民だったなら物語のように、自由に好きな人と恋ができたかしら?」とかの、所謂ないものねだりであって、身分制度自体を疑問に思うことではない。

 彼女、一体何者なの?
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