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小さな変化。

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「へぇ。それで、そのご令嬢は婚約者に確かめたんだ?」

 マキシミリオン王国からシリルが迎えに来てくれて、私はベリンダ様よりひと足先にマキシミリオン王国に向かった。

 というのもベリンダ様、いざ留学に出発って時に、婚約の申し込みが来たのよ。

 アルトナー王国の西にある、ベルーナ王国のから。

 さすがに、他国の王家からの婚約の打診を放置して留学するわけにはいかないわ。

 シリルが迎えに来たし、詳細までは聞かなかったけど、手紙をくれることになっている。

 シリルがアルトナー王国での友人たちのことを聞きたがったから、その話から始まり、グレース様の話になったの。

「ええ。カロリーナ様が後押しして。そしたらね、ニトリル様ってば、妹様やお母様にお相手していただいて、ダンスの練習やエスコートなどを練習なさっていたのですって。年上だから、そんなこともできないのかって幻滅されないように、ですって!」

 お聞きした時は、感動してしまったわ。

 殿方とは、こうあるものよね。

 愛とか恋とかも大事だけど、相手のことを思い、相手のために努力するなんて素敵じゃない?

 それを知ったグレース様は、真っ赤になっていたわ。

 嬉しかったでしょうね。
これで三ヶ月後、何の憂いもなくニトリル様に嫁げるというものよ。

「ま、当然だろうね。聞いた感じだと、その令息は彼女のことを愛してるんだろ?」

「ええ。とても」

「なら、好かれるように努力するさ。本来なら、そんな陰の努力を話したくなかっただろうけど、隠すことがプラスにならないと判断して話したんだろうね」

 シリルは紅茶を飲みながら、そう言って笑った。

 マキシミリオン王国に昨日着いて、今日は滞在する王宮でシリルとのお茶会だ。

 学園は、週明けの明後日からとなっている。

 私は目の前に座るシリルを、マジマジと見た。

 その視線に気付いたシリルが、首を傾げる。

「どうかした?」

「シリルも、私に隠して努力してるの?」

「・・・まさか、クロエにそんな質問されるとは思わなかったよ。そうだね、僕はクロエのことが好きだから、好いてもらえるように色々とね」

 そう言って、シリルはクスクスと笑う。

 そうね。
シリルは私に婚約を求めるけど、それを強要することはなかった。

 交換条件だと言ったけど、私が嫌だと言ったなら、きっと婚約しないまま助けてくれたわ。

 それに、私が応え辛いと判断したら、すぐに話を逸らしてくれる。

 私に対して、いつもシリルは気遣ってくれてた。

 そのことに、改めて胸の奥が温かくなった気がした。

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