拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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友人の恋②

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 グレース様の言葉に、カロリーナ様が微笑ましそうな表情をされた。

「ニトリル公爵令息様に、お聞きになればよろしいのに」

「・・・そんなの聞けないわ。だって彼は私の婚約者として、ちゃんと向き合ってくれているもの。過去のことをアレコレ言うなんて駄目よ。だって、何を言っても、過去は過去でどうしようもないもの」

 確かに、グレース様の言う通りだと思う。

 ニトリル様は私たちより五年も先に生まれているんだから、お付き合いした人がいてもおかしくない。

 それでも、現在はグレース様の婚約者としてグレース様に向き合われているんだから、終わったことをどうこう言っても仕方ないことだと思う。

 グレース様もそれを理解されていて、でもニトリル様の隣にいた過去の女性に嫉妬してしまうのね。

 私も・・・
そんな想いをすることがあるのかしら。

 、婚約者に相手にされなければ、悲しくなる。

 少しでも会いたいと思い、こちらから歩み寄ろうとする。

 でも、

 別に最初から、どうでもいいと思っていたわけじゃない。

 政略結婚だけど、ちゃんと仲良くなれればいいと思っていた。

 でも最初から下に見られて・・・

 なら、歩み寄る必要はないって思った。

 全然会おうとしない婚約者に、なら一年後に解消するためにこのまま会わなくていいかと思った。

 婚約者に従妹がまとわりつこうと、全く気にならなかったし、かけらも嫉妬なんてしなかった。

 シリルのことは、嫌いじゃない。
だって、だから。

 お父様やお母様、お姉様やお義兄様と同じ。

 だから、婚約して欲しいとずっと言われていたけど、曖昧にはぐらかしてきた。

 駄目になった時に、家族に・・・元の関係に戻れないと思ったから。

 だけど、婚約することになってしまったから・・・

 だから今度はちゃんと手の届く距離で。

 喧嘩してもすぐに仲直りできる距離で。

 シリルの言動がすぐに分かる距離で。

 そして、シリルが他に好きな人ができたら・・・すぐに分かる距離で。

 そう思った。

「確かに過去は過去ですが、グレース様がそんなお顔をなさるくらいなら、お聞きになるべきだと私は思いますわ。ニトリル様は誠実な方なのでしょう?」

「・・・カロリーナ様ならお聞きになれますの?」

「私の婚約者は脳みそまで筋肉で出来ていますから、女性の心など全く理解りませんの。ですから、思ったこと、聞きたいことはこちらから問わないと、察するなんてことは出来ません。現在は、私が後継者教育に忙しいので、会う時間も減っていますから、余計に口にするようにしています」

 あら。クリスプ伯爵令息って、そういう方なのね。

 
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