拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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婚約事情。

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 シリルに、アルトナー王国で友人たちと会う件と、ベリンダ様も留学したいということを伝えると、手続きに伯母様の承認が必要だから、アルトナー王国に迎えに行くと言われた。

 そうだわ。
私もアルトナー王国の伯爵令嬢という地位をもらえないか、伯母様にお伺いしなきゃ。

 ベリンダ様は、王女殿下の身分のままで留学されるのかしら?

「え?クロエ様は伯爵令嬢に偽装されますの?」

「だって、シリルに群がってくるご令嬢たちを見極めるには、皇女の立場は邪魔なんですもの。きっと、元婚約者様やファンティーヌ様のように、本質を見せて下さると思いますわ」

 私が子爵令嬢と名乗ったことで、元婚約者様は黒髪黒目でもメルキオール帝国と結びつけなかった。

 自分の身分に溺れている方って、思い込みが激しいというのかしら。

 皇女相手でも同じ態度を取れるくらいの気概があればまだ良いけれど、自分の身分でマウントを取る方って、弱い者ばかりに牙を剥くのよね。

 シリルは、第三王子殿下であの容姿だもの。

 絶対、自国のご令嬢方はシリルの婚約者の座を狙っていると思うわ。

 マキシミリオン王国は、一番上の王太子殿下がすでに結婚されているし、次男のルーファス殿下はお姉様と結婚された。

 シリルがマキシミリオン王国で公爵位を賜るのかは分からなくても、未婚で婚約者が王子殿下。縁を結びたいと考えて、おかしくないわよね。

 ベリンダ様の婚約者になれる令息、いるかしら?

 マキシミリオン王国のことは、よく知らないのよね。

「本当に、マキシミリオン王国で婚活しますの?」

「婚活って何ですか?」

「婚約者や恋人を探す行為のことですって。リリアから聞きましたの」

 リリアは子爵令嬢だから、民の間で流行っていることとか、よく知っているの。

 うちは身分云々よりも、本人の資質で侍女や侍従、護衛騎士を選んでるのよね。

 実際、リリアは礼儀作法もちゃんと出来ているし、よく気がつく。

「婚活・・・面白い言葉ですわね。婚約者を探す活動で婚活なのですね。ええ、できるならアルトナーで暮らして下さる方を探したいと思いますわ」

「アルトナーでは駄目なの?」

「・・・クロエ様もご存知でしょう?我が国の高位貴族のご子息は、ほとんどが婚約済み。残っているのは、継ぐ家のない次男以降。家持ちで残っているのは、少々問題のある方ですわ」

「・・・」

 私は一年ほどアルトナー王国で暮らしていたから、アルトナー王国の婚約事情はなんとなくだが分かっていた。

 アルトナー王国は、成人の年齢が他国より早い。

 マキシミリオン王国と比べても三年も早く、そのせいで婚約も幼いうちから決まっている場合が多い。

 なのに、王族であるベリンダ様の婚約がまだ成っていないのは何故かしら。
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