拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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行ってみたい。

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「本当に良いのか?クロエ」

 何度目か分からないけど、お父様に聞かれて私は頷いた。

 いい加減、しつこいわ。
確かに協力の交換条件ではあったけど、嫌ならそんな条件のまないわ。

「クロエには、メルキオール帝国で暮らして欲しいのに」

「あら、お姉様。シリルは第三王子殿下ですもの。別にマキシミリオン王国で住まなければならないわけではありませんわ」

「そうなの?」

「でも、マキシミリオン王国には行ってみたいのです。シリルが通っている学園に、転入しようと思っていますの」

 シリルは、マキシミリオン王国の王立学園に通っている。

 マキシミリオン王国の王立学園は、十六歳から十八歳まで通うそうだから、私も通いたいのよね。

 メルキオール帝国は、高位貴族は家庭教師から学ぶから、学園に通わないのよ。

 伯母様からの婚約を受け入れたのも、アルトナー王国で学園に通いたかったというのもあるのよね。

「えーっ。やっとクロエと暮らせると思ったのに」

「婚約者になったのですから、出来る限り時間を共有したいと考えていますの」

 シリルのことを信用していないわけじゃないけど、無条件で信じられるほどシリルのことを知らないもの。

「オーロラ。クロエはアルトナーで嫌な思いをして来たのよ。クロエが望むようにさせてあげなさい」

「お母様・・・分かりましたわ。でもクロエ、マキシミリオン王国で嫌な思いをさせられたら、私やルーにちゃんと言いなさい?ちゃんと痛い目に合わせてあげるから」

「ふふっ。ありがとうございます、お姉様」

 でもお気持ちは嬉しいけど、お姉様とお母様がお怒りになったら、マキシミリオン王国の国王陛下たちが怯えてしまうわ。

「シリル、兄上に迷惑をかけるようなことをするなよ」

「分かっています」

 そういえば、シリルとルーファスお兄様のお兄様、王太子殿下とお会いするのは久しぶりだわ。

 お姉様たちの結婚式以来かしら。

「僕は先に戻って、クロエの転入手続きとかしておくよ。準備が出来たら迎えに来るから」

「分かったわ。あ。身分はどうしようかしら。アルトナーの子爵令嬢・・・子爵だと面倒ね。伯母様に言って伯爵令嬢と地位をいただこうかしら」

「・・・わかったよ。父上たちにはその線で話しておく」

 あら、ため息を吐かなくてもいいじゃない。

 子爵令嬢とか伯爵令嬢とかだと、のよ。

 身分で下に見る人とか、態度を変える人とか、わかりやすいんだもの。

 第三王子であるシリルを狙っている人たちは、きっとたくさんいるのでしょう?

 
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