52 / 130
子爵令嬢と名乗る①
しおりを挟む
一ヶ月ほどたった頃、シリルがマキシミリオン王国からやって来た。
「お疲れ様、シリル」
「うん。無事に組織幹部たちの処理は終わったよ。あとは、魔法師たちが好きに使うから、僕の手を離れた」
使うって・・・
新たな魔道具の実験に使うと聞いていたから、私は何も言わずに微笑んだ。
再生の魔道具もだけど、実際に使ってみないと、どんな効果があるのか影響があるのかが分からない。
だから、犯罪者で処刑対象の人たちを使うのよね。
メルキオール帝国は処刑制度がないから、マキシミリオン王国に犯罪者を送って、そういう形でお互い成り立ってるの。
「婚約の話をしに、伯父様たちも一緒に来るのかと思ったわ」
「うん。一緒に来ると言ってたんだけど、僕だけ先に来させてもらった」
「あら?どうして?」
「うん・・・僕はクロエが好きだよ。初めて会った時から好きだった。でも、クロエにとって僕は、兄上の弟でしかないよね?僕のことを好きではいてくれるけど、それは兄上や義姉上と同じ『好き』で、恋愛的な好きじゃない」
私は、シリルの言葉を黙って聞いた。
シリルの言っていることは正しい。
シリルのことを好きな気持ちは、家族愛でしかない。
元々、違う国で暮らしているから、たまにしか会わなかったし。
それに・・・
私はそういう、恋愛感情的なものが人よりも薄弱な気がする。
本当の恋を知らないだけだと言われたら、それまでだけど。
「アルトナー王国で、子爵令嬢と名乗ってたって?」
突然話が変わって、私はキョトンとした。
「え、ええ」
「どうして?」
「どうしてって・・・伯母様の指示よ。皇女の身分は明かさない方が良いからって。子爵令嬢にしたのは、相手が身分差別をしないかとか色々知りたかったみたいよ」
私がアルトナー王国でルーベンス子爵令嬢を名乗っていたのは、伯母様・・・女王陛下の指示だ。
もっと遡るなら、私が他国の、コンラッド公爵令息と婚約することになったのは、伯母様とお父様がお母様のことで揉めた結果だ。
お母様のことを溺愛していた伯母様が、お母様を奪ったお父様にせめて姪の私をアルトナー王国に嫁がせろと言って・・・
賭けをした挙げ句に、お父様が負けた。
もちろん伯母様は調査を重ねて、あのコンラッド公爵令息を選んだんだけど。
調査の段階では、彼は優秀だったそう。
公爵夫妻にも問題はないし、兄が王配になることが決まっていたから、いずれ公爵になる。
身分的に問題ないし、性格的にも大丈夫だと思われていた。
「お疲れ様、シリル」
「うん。無事に組織幹部たちの処理は終わったよ。あとは、魔法師たちが好きに使うから、僕の手を離れた」
使うって・・・
新たな魔道具の実験に使うと聞いていたから、私は何も言わずに微笑んだ。
再生の魔道具もだけど、実際に使ってみないと、どんな効果があるのか影響があるのかが分からない。
だから、犯罪者で処刑対象の人たちを使うのよね。
メルキオール帝国は処刑制度がないから、マキシミリオン王国に犯罪者を送って、そういう形でお互い成り立ってるの。
「婚約の話をしに、伯父様たちも一緒に来るのかと思ったわ」
「うん。一緒に来ると言ってたんだけど、僕だけ先に来させてもらった」
「あら?どうして?」
「うん・・・僕はクロエが好きだよ。初めて会った時から好きだった。でも、クロエにとって僕は、兄上の弟でしかないよね?僕のことを好きではいてくれるけど、それは兄上や義姉上と同じ『好き』で、恋愛的な好きじゃない」
私は、シリルの言葉を黙って聞いた。
シリルの言っていることは正しい。
シリルのことを好きな気持ちは、家族愛でしかない。
元々、違う国で暮らしているから、たまにしか会わなかったし。
それに・・・
私はそういう、恋愛感情的なものが人よりも薄弱な気がする。
本当の恋を知らないだけだと言われたら、それまでだけど。
「アルトナー王国で、子爵令嬢と名乗ってたって?」
突然話が変わって、私はキョトンとした。
「え、ええ」
「どうして?」
「どうしてって・・・伯母様の指示よ。皇女の身分は明かさない方が良いからって。子爵令嬢にしたのは、相手が身分差別をしないかとか色々知りたかったみたいよ」
私がアルトナー王国でルーベンス子爵令嬢を名乗っていたのは、伯母様・・・女王陛下の指示だ。
もっと遡るなら、私が他国の、コンラッド公爵令息と婚約することになったのは、伯母様とお父様がお母様のことで揉めた結果だ。
お母様のことを溺愛していた伯母様が、お母様を奪ったお父様にせめて姪の私をアルトナー王国に嫁がせろと言って・・・
賭けをした挙げ句に、お父様が負けた。
もちろん伯母様は調査を重ねて、あのコンラッド公爵令息を選んだんだけど。
調査の段階では、彼は優秀だったそう。
公爵夫妻にも問題はないし、兄が王配になることが決まっていたから、いずれ公爵になる。
身分的に問題ないし、性格的にも大丈夫だと思われていた。
2,430
お気に入りに追加
5,674
あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

邪魔者はどちらでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。
私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。
ある日、そんな私に婚約者ができる。
相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。
初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。
そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。
その日から、私の生活は一変して――
※過去作の改稿版になります。
※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。
※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる