上 下
50 / 118

それぞれのその後①

しおりを挟む
 キティさんと元レグディア男爵夫人のその後について、ルーファスお兄様から話を聞いた。

 マキシミリオン王国から我が国に籍を移してくれた魔法師の方々を統括しているのがルーファスお兄様で、今回の件もお兄様が責任者なの。

 二人が送られたのは、北の国境線にある魔物が多くいるとされる森。

 そこの管理は、王家と北の辺境伯家がしているの。

 辺境伯家のご嫡男とルーファスお兄様は同い年で、仲良しらしいわ。

「それでお二人は?」

「北の国境に着くまで、ずっとお互い文句を言い合っていたらしい。縄で縛っていなかったら、掴み合いの喧嘩になっていそうなくらいだったと騎士たちが言ってたよ。魔の森では一週間のうちに、娘の方が左腕を肩から、それと腰から下を欠損。母親の方が右足と左腕の肘から下を欠損、背中を引き裂かれたと言っていた。それからはお互いを罵り合う余裕はなくなったようだ」

「・・・」

 魔道具のおかげ?で死なないのは理解しているけれど、その恐怖と激痛を想像すると、あっさり死んだ方が幸せだと思えるわ。

「魔物は退治できましたの?」

「ああ。あそこは定期的に強い魔物が現れるそうだ。他国から流れてきているらしい。それに森には動物たちが多くいて、餌に困らないから集まりやすいのだと聞いた。動物たちの生態系を壊すわけにいかないから、殲滅活動はしにくい。だから二人の存在はありがたいとフィートは言ってたよ」

 フィートというのは、辺境伯ご嫡男様の名前だ。

 餌としての存在をありがたいと言われても、二人とも嬉しくないだろう。

「魔道具があるので、ご存命ですのね?」

「ああ。使一度魔物と遭遇したら、しばらくは砦で監禁している。餌が必要な強い魔物は、そうしょっちゅう出ては来ないから、まぁ、一年くらいは保つだろう」

「・・・そうですか。レグディア男爵の方はどうなりましたの?」

 私の問いに答えてくれたのは、お母様だ。

「男爵は何も関わっていないし、ある意味夫人に騙されたようなものだけど、酷く罪悪感を抱いていてね、爵位を返上して来たわ。もう結婚するつもりはないし、後継もいないからって。同じ男爵位の弟がいて、弟の領地の片隅で住むことにしたようよ。だから、レグディア男爵の領地は、その弟に任せることにしたわ」

「そうですか。おかわいそうですが、貴族社会から離れた方が、幸せかもしれませんね」

 今回の捕縛は、内々に行ったから漏れることはないだろうけど、夫人と令嬢はどこに行ったのかと聞く人もいるだろう。

 不貞をしたから離縁した、と堂々と嘘を吐けるタイプじゃなさそうだし、後継もいなくなったからこれで良かったのよね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約を正式に決める日に、大好きなあなたは姿を現しませんでした──。

Nao*
恋愛
私にはただ一人、昔からずっと好きな人が居た。 そして親同士の約束とは言え、そんな彼との間に婚約と言う話が出て私はとても嬉しかった。 だが彼は王都への留学を望み、正式に婚約するのは彼が戻ってからと言う事に…。 ところが私達の婚約を正式に決める日、彼は何故か一向に姿を現さず─? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

みんなもやってるから浮気ですか?なら、みんながやってるので婚約破棄いたしますね

荷居人(にいと)
恋愛
私には愛する婚約者がいる。幼い頃から決まっている仲のいい婚約者が。 優しくて私だけをまっすぐ見てくれる誠実な人。嫌なことがあっても彼がいればそれだけで幸せな日となるほどに大切な人。 そんな婚約者は学園の高等部になってから変わってしまった。 「すまない!男ならみんながやってることだからと断りきれなくて……次からはしないよ!愛してるのは君だけなんだ!」 誠実から不誠実の称号を得た最初の彼の変化。浮気だった。気づいたのは周りの一部の令嬢が婚約者の浮気で落ち込むのが多くなり、まさか彼は違うわよね………と周りに流されながら彼を疑う罪悪感を拭うために調べたこと。 それがまさか彼の浮気を発覚させるなんて思いもしなかった。知ったとき彼を泣いて責めた。彼は申し訳なさそうに謝って私だけを愛していると何度も何度も私を慰めてくれた。 浮気をする理由は浮気で婚約者の愛を確かめるためなんて言われているのは噂でも知っていて、実際それで泣く令嬢は多くいた。そんな噂に彼も流されたのだろう。自分の愛は信用に足らなかったのだろうかと悲しい気持ちを抑えながらも、そう理解して、これからはもっと彼との時間を増やそうと決意した。 だけど………二度、三度と繰り返され、彼の態度もだんだん変わり、私はもう彼への愛が冷めるどころか、彼の愛を信じることなんてできるはずもなかった。 みんながやってるから許される?我慢ならなくなった令嬢たちが次々と婚約破棄をしてるのもみんながやってるから許されますよね?拒否は聞きません。だってみんながやってますもの。

処理中です...