41 / 118
パーティーという名の罠。
しおりを挟む
私たちというか、皇帝であるお父様と皇帝妃であるお母様への挨拶が全て終わると、ダンスが始まる。
お父様とお母様が踊り、お姉様とルーファスお兄様が踊る。
私はシリルと踊りながら、離れた場所にいるレグディア男爵令嬢に意識を向けた。
見たことのない令息、しかも容姿が優れていて、高位貴族と思われるシリルから視線を逸らさないことに、思わず唇の端が笑みの形をとってしまう。
「シリル、予定通りにね」
「分かってる。僕が離れたら、兄上たちと一緒にいてよ?」
「ええ。シリルたちが見える場所にいるわ」
おそらくこの後、フリーのダンスになればレグディア男爵令嬢はシリルに近付いて来る。
伯爵家以上のご令嬢には、シリルにダンスを申し込まないように伝えてある。
令嬢から申し込むのははしたないとされる国もあるけど、我が国は女性からダンスを申し込むことは別に否とされない。
男性側は申し込まれたら、一回はお相手しなければならない。
あくまでも社交のひとつ。
ダンスを受け入れてくれたからといって、好意があるというわけではない。
だから間違いなくレグディア男爵令嬢は、シリルにダンスを申し込んでくる。
そしてダンスが終わった後に、何らかの行動を起こすはずだ。
私はシリルとのダンスを終えて、シリルのエスコートでお姉様の元へと移動する。
この後は下位貴族たちのダンスがあり、その後に自由時間となる。
シリルから飲み物を受け取り、ホールを眺めていると、レグディア男爵令嬢はブッセ伯爵令息と踊り、一曲終わると今度はターナー伯爵令息と踊り始めた。
「あの二人は・・・終わったな」
シリルの言葉に頷く。
メルキオール帝国の全貴族が集まったパーティーで、婚約者以外と仲睦まじくダンスを踊る。
それが周囲にどう見られるか、薬物でレグディア男爵令嬢に魅了されている二人には分からない。
「婚約者の家も自分の両親もいることすら考えれない状態って、解毒できるかしら?」
「薬の成分を分析してみないと、何とも言えないな。無理に解毒すれば、廃人になる可能性もある」
そうらしいのよね。
精神を操る薬の場合、あまりに強いものだと解毒薬を使うと、精神を病んでしまう可能性があるらしい。
ソルティア侯爵家とフォレスコム伯爵家、ターナー伯爵家にブッセ伯爵家の当主には、薬を使われていることは伝えてある。
そしてご令嬢たちの望みと、解毒出来ない可能性についても。
だから自分たちの息子が、婚約者以外をまるで婚約者のように扱っていても何も言わない。止めもしない。
何故ならこれは、パーティーという名の罠だから。
彼らがいるのは、張り巡らされた蜘蛛の巣の上。
お父様とお母様が踊り、お姉様とルーファスお兄様が踊る。
私はシリルと踊りながら、離れた場所にいるレグディア男爵令嬢に意識を向けた。
見たことのない令息、しかも容姿が優れていて、高位貴族と思われるシリルから視線を逸らさないことに、思わず唇の端が笑みの形をとってしまう。
「シリル、予定通りにね」
「分かってる。僕が離れたら、兄上たちと一緒にいてよ?」
「ええ。シリルたちが見える場所にいるわ」
おそらくこの後、フリーのダンスになればレグディア男爵令嬢はシリルに近付いて来る。
伯爵家以上のご令嬢には、シリルにダンスを申し込まないように伝えてある。
令嬢から申し込むのははしたないとされる国もあるけど、我が国は女性からダンスを申し込むことは別に否とされない。
男性側は申し込まれたら、一回はお相手しなければならない。
あくまでも社交のひとつ。
ダンスを受け入れてくれたからといって、好意があるというわけではない。
だから間違いなくレグディア男爵令嬢は、シリルにダンスを申し込んでくる。
そしてダンスが終わった後に、何らかの行動を起こすはずだ。
私はシリルとのダンスを終えて、シリルのエスコートでお姉様の元へと移動する。
この後は下位貴族たちのダンスがあり、その後に自由時間となる。
シリルから飲み物を受け取り、ホールを眺めていると、レグディア男爵令嬢はブッセ伯爵令息と踊り、一曲終わると今度はターナー伯爵令息と踊り始めた。
「あの二人は・・・終わったな」
シリルの言葉に頷く。
メルキオール帝国の全貴族が集まったパーティーで、婚約者以外と仲睦まじくダンスを踊る。
それが周囲にどう見られるか、薬物でレグディア男爵令嬢に魅了されている二人には分からない。
「婚約者の家も自分の両親もいることすら考えれない状態って、解毒できるかしら?」
「薬の成分を分析してみないと、何とも言えないな。無理に解毒すれば、廃人になる可能性もある」
そうらしいのよね。
精神を操る薬の場合、あまりに強いものだと解毒薬を使うと、精神を病んでしまう可能性があるらしい。
ソルティア侯爵家とフォレスコム伯爵家、ターナー伯爵家にブッセ伯爵家の当主には、薬を使われていることは伝えてある。
そしてご令嬢たちの望みと、解毒出来ない可能性についても。
だから自分たちの息子が、婚約者以外をまるで婚約者のように扱っていても何も言わない。止めもしない。
何故ならこれは、パーティーという名の罠だから。
彼らがいるのは、張り巡らされた蜘蛛の巣の上。
2,468
お気に入りに追加
6,068
あなたにおすすめの小説
婚約を正式に決める日に、大好きなあなたは姿を現しませんでした──。
Nao*
恋愛
私にはただ一人、昔からずっと好きな人が居た。
そして親同士の約束とは言え、そんな彼との間に婚約と言う話が出て私はとても嬉しかった。
だが彼は王都への留学を望み、正式に婚約するのは彼が戻ってからと言う事に…。
ところが私達の婚約を正式に決める日、彼は何故か一向に姿を現さず─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
裏切りのその後 〜現実を目の当たりにした令嬢の行動〜
AliceJoker
恋愛
卒業パーティの夜
私はちょっと外の空気を吸おうとベランダに出た。
だがベランダに出た途端、私は見てはいけない物を見てしまった。
そう、私の婚約者と親友が愛を囁いて抱き合ってるとこを…
____________________________________________________
ゆるふわ(?)設定です。
浮気ものの話を自分なりにアレンジしたものです!
2つのエンドがあります。
本格的なざまぁは他視点からです。
*別視点読まなくても大丈夫です!本編とエンドは繋がってます!
*別視点はざまぁ専用です!
小説家になろうにも掲載しています。
HOT14位 (2020.09.16)
HOT1位 (2020.09.17-18)
恋愛1位(2020.09.17 - 20)
私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
みんなもやってるから浮気ですか?なら、みんながやってるので婚約破棄いたしますね
荷居人(にいと)
恋愛
私には愛する婚約者がいる。幼い頃から決まっている仲のいい婚約者が。
優しくて私だけをまっすぐ見てくれる誠実な人。嫌なことがあっても彼がいればそれだけで幸せな日となるほどに大切な人。
そんな婚約者は学園の高等部になってから変わってしまった。
「すまない!男ならみんながやってることだからと断りきれなくて……次からはしないよ!愛してるのは君だけなんだ!」
誠実から不誠実の称号を得た最初の彼の変化。浮気だった。気づいたのは周りの一部の令嬢が婚約者の浮気で落ち込むのが多くなり、まさか彼は違うわよね………と周りに流されながら彼を疑う罪悪感を拭うために調べたこと。
それがまさか彼の浮気を発覚させるなんて思いもしなかった。知ったとき彼を泣いて責めた。彼は申し訳なさそうに謝って私だけを愛していると何度も何度も私を慰めてくれた。
浮気をする理由は浮気で婚約者の愛を確かめるためなんて言われているのは噂でも知っていて、実際それで泣く令嬢は多くいた。そんな噂に彼も流されたのだろう。自分の愛は信用に足らなかったのだろうかと悲しい気持ちを抑えながらも、そう理解して、これからはもっと彼との時間を増やそうと決意した。
だけど………二度、三度と繰り返され、彼の態度もだんだん変わり、私はもう彼への愛が冷めるどころか、彼の愛を信じることなんてできるはずもなかった。
みんながやってるから許される?我慢ならなくなった令嬢たちが次々と婚約破棄をしてるのもみんながやってるから許されますよね?拒否は聞きません。だってみんながやってますもの。
(完結)私が貴方から卒業する時
青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。
だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・
※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる