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犠牲者。

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「侍従は・・・薬と魔法契約の板挟みになって、亡くなりました。おそらく使われた薬が、相当にキツい物だったのだと思います。そこに魔法契約の激痛が来て、心の臓がもたなかったのだと」

 まさか、死者が出ていたなんて。
でも、それではレグディア男爵令嬢の仕業だと分からなかったのでは?

「レグディア男爵令嬢の仕業だと何故思われたのですか?」

「侍従の死の後、徹底的に調査しました。彼には魔法契約をしていたこともあり、ギリギリ一日前の行動までなら、どこに行っていたのかや誰と会話したのかまで分かるようになっていたのです。もちろん、それ専用の魔道具が必要ですが」

「そんなものがあるのですね」

「死者を冒涜するようなものだから、よほどのことがなければ、魔道具を作った我が国でも使われない。だが、本人か家族の了承があれば調べることが出来る」

 シリルの言葉に、ルノール公爵令息は頷いた。

「彼の両親が・・・息子の無念を晴らして欲しいと、そのために解明して欲しいと願われました。そして、レグディア男爵令嬢から薬が入ったと思われる飲み物を、無理やり飲まされたことが分かったのです。ただ・・・そこに薬物が入っていた証拠が掴めなかった」

 ルノール公爵令息は、ずっとそのことを調べていたそうだ。

 侍従の方の死を無駄にしないために。

「魔道具が反応したために、あの女は僕に近付かなくなってしまった。報告は上げていたので、他の公爵家や侯爵家の令息たちに被害はなかったけれど、まさか伯爵令息が二人も毒牙にかかるなんて・・・」

「それはどうしようもなかったことだ。国としても貴重で高額な魔道具を、全貴族に配布するわけにはいかなかった。それにしたわけではないことを、全貴族に警告するわけにもいかない。大切なのは、この後の対処だ。そのために僕が囮役を引き受けたのだから」

「・・・はい。分かっております」

「シリル。同じように、強い薬物を使われたら危険だわ」

 私はシリルに、囮になることをやめるように伝えた。

 他に追い詰める方法を探すべきだ。

 確かに魔道具を用いていれば、薬に反応して飲まずに済むかもしれない。

 でも、何事にも完璧はない。
たった一回でも失敗すれば、九十九回成功していても意味がない。

 だけど、シリルは首を横に振った。

「駄目だ。今回の機会を逃すわけにはいかない。他国に逃げられたら、同じような被害が繰り返される。おそらく、伯爵令息では我慢できずに、再び高位貴族に接触しようとするだろう。そこで失敗すれば奴らは他国に逃亡する。今回が最後のチャンスだ」



 
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