拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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報告と連絡と相談。

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「というわけなのですけど、どう思われます?というか、ご存知でしたか?お父様」

 家族全員で集まった応接室。
そこで私が話した内容に、お父様とお義兄様は眉を寄せ、お母様とお姉様は微笑みを浮かべたままだった。

 あ。
お姉様。手に持ったカップの取っ手にピシリとヒビが!

 すぐに、お姉様付きの侍女がカップを受け取り、新しいカップに紅茶を注ぐ。

 あのカップ、何個目かしら?
もういっそ銀のカップとかにすれば良いんじゃない、と思う私は間違ってないわよね?

「ほほほ。まさかこのメルキオール帝国にそのようないるだなんて。旦那様はご存知ですわよね?」

 あ。
久しぶりの会話が、ものすごく剣呑としたものになってしまったわ。

 ごめんなさい、お父様。
もし、ご存知なかったとしたら、お話してもらえない期間が延長するかも。

「ターナー伯爵家とソルティア侯爵家から相談を受けている。ブッセ伯爵家とフォレスコム伯爵家の方からは聞いていないが」

「まぁ、当然ですわね。ターナー伯爵家とソルティア侯爵家にとっては、大事な家を継ぐ者ですもの。目が行き届いてないようでは、帝国貴族として能力不足ですものね」

「オーロラ。その男爵令嬢が彼らの周囲に出没し出したのは、ここ二ヶ月ほどのことだ。どうやら、公爵家や侯爵家に相手にされなくて、伯爵家に手を伸ばしたらしい。当主が把握できてなくても仕方ないよ」

 ちゃんと、調べはついているのね。

 まぁ、アグネス様たちもご存知だったのだから、ここでお父様たちが知らないとなると『お仕置き』期間が無期限になる可能性があったわね。

「それで、どうして放置ですの?」

 放置しているのよね?

 私の質問に答えてくれたのは、ルーファスお義兄様だった。

「実は、その男爵令嬢・・・レグディア男爵夫人が産んだ娘なわけだが、その父親が問題でね」

「父親が?」

「夫人はレグディア男爵と結婚する前にその男と交際していて、そのキティという娘を産んだのだけどね。ソイツが闇社会の人間だと分かったんだ」

 闇社会。
人に害を及ぼす存在。

 危険な薬を扱ったり、人身売買をしたりと、危険視されている団体で、何人いるかとか、どこの国の人間だとか、ハッキリと解明されていない。

 そんな危険分子との間の子供なの?

「怪しい薬を使っている可能性があって、極秘に調査中なんだよ。夫人はともかく娘とは繋がっている可能性が高くてね」

「じゃあ、薬のせいでその令嬢に傾倒しているの?」

 あら、でもそれなら、余計に高位貴族を狙うのじゃないの?

 
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