拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

文字の大きさ
上 下
31 / 130

令嬢たちの怒りは物凄い。

しおりを挟む
「ええ!ええ!サマンサ様のおっしゃる通りですわ。あの非常識な方は、私の婚約者にも」

「勝手に名前を呼び、腕に胸を押し付けますのよ。またそれをまんざらでもない顔で!」

「あら。シンシア様の婚約者は、ちゃんと拒んでらっしゃったではないですか。うちの婚約者など、言葉も優しく拒んでいるとは思えませんでしたわ」

 まあ、出るわ、出るわ。

 お茶会に招ばれていた、高位貴族のご令嬢たちの不満。

 どうやら彼女たちの婚約者は、そのお花畑ご令嬢にすり寄られている様子で、令嬢たちは治まりそうにない。

 まぁ、彼女たちは高位貴族のご令嬢。
 普段は、どれだけ不満に思っても口汚く相手を叱咤したりしない。

 扇子で口元を隠し、表情も変えず、やんわりと相手を嗜める程度。

 婚約者相手だからといって、他の目がある前で淑女としてのお面を外したりしない。

 婚約者はまだ他人だもの。
何かがあって婚約解消になった時に「アイツは素はああなんだ」とか変な噂を流されたら困るもの。

 相手が信用に値すると分かるまでは、内面は明かさないわ。

「本当に!甘えてくる相手にデレデレして!」

「殿方はみんな、あのような令嬢がお好きなのかしら!まるで娼婦ではないですか」

「そんなことを言ったら娼婦の方に失礼よ。あの方々はお仕事でなさっているのだもの。単に貞操観念のない人と一緒にしたら失礼ですわ」

 ああ。とうとう、婚約者への不満に話が変わってきたわ。

 そろそろ止めた方が良さそうね。

「皆様、そのあたりになさって?しばらく国を離れていた私には、皆様方と婚約者様の仲は分かりませんが、非常識な相手にこちらがまともに相手をしても無駄ですわ。彼らには人の言葉は通じませんのよ」

「も、申し訳ございません。クロエ様のご帰国をするために催したお茶会だというのに、私事でお耳汚しを」

「尋ねたのは私ですから、気になさらないで。それに、少しは不満も吐き出さないといけませんものね。私たちの婚約は、家と家の契約で政略結婚。よほどのことがない限り、解消されるものではありません。でも、だからこそ、お互い敬愛できる存在でありたいものです。ですから、もし・・・そのご令嬢に心を寄せるような婚約者がいらっしゃるようでしたら、後で教えてくださいませ。そのような方は、メルキオール帝国の高位貴族にはから」

「「「はい。クロエ様の御心のままに」」」

 元婚約者様やファンティーヌ様のような方が、次期メルキオール帝国の高位貴族として権力を持つなんて、あってはならないことだものね。


 
しおりを挟む
感想 370

あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

処理中です...