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お母様が手厳しいです。
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「お母様」
綺麗な銀髪はキラキラしていて、瞳はとても深い紫色。
三十代後半という年齢なのに、まるで姉と言っても過言ではない美しい人。
「アチラでお茶を飲みましょう?お姉様はお元気だった?」
「ええ、とても」
お母様アリシア・メルキオールは、アルトナー王国女王陛下ブリジット・アルトナー様の五歳年下の妹だ。
私が元婚約者様との婚約を受け入れたのは、伯母様の国だからということもあった。
ただ私は婚約の最中に、伯母様に相談することはなかった。
子爵という立場だけは戴いたけど、アルトナー王国の決まり事を伯母と姪の間柄だといって、破らせるつもりはなかった。
だから、大人しく一年待ったのだ。
「あ、アリシア・・・」
「さ、クロエ。行きましょう?」
「・・・」
完全にお父様を無視しているわ。
あーあ。あんなに肩を落としちゃって。
私はお父様の様子を気にしながらも、お母様に付いて部屋を出た。
てっきりお母様のお部屋に招ばれるのかと思ったら、連れて行かれたのは温室だった。
世界でも珍しい硝子で覆われたその小屋は、温度が一定に保たれていて、庭で育てるのが難しい花も育てることが出来る。
お母様と結婚した時に、お父様が他国から技師を呼んで作られたもの、らしい。
今も庭師が丁寧に育てた花が、棚に並んで色鮮やかに温室を飾っている。
温室の中央に小さなテーブルと二脚の椅子が置かれていて、侍女がお茶の準備をしていた。
「改めて、お帰りなさい。クロエ」
「お母様・・・ご心配をおかけしました」
帝国の皇族には、優れた諜報部員がいる。
きっとお母様は、私がどんな対応をされていたのか、全て知っていたと思う。
それでも、実家であるアルトナー王国の王家を、そして姉である女王陛下を信用して、一年間口を出さずに待ってくれていた。
実際、辛い思いはしていない。
最初こそ「何コイツ?」とか思ったけど。
一応は、婚約者の義務として手紙の返信とかもしたけど。
全くもって交流をしようとしない元婚約者様には・・・
途中からは、ありがたいと思ってしまっていた。
だってあんな蔑んだ態度で会われたら、イラッとするもの。
それなら会わなければ面倒もないし、一年後にする解消もすんなり行く。
阿呆過ぎて、解消の際は女王陛下に面倒をかけてしまったけど、交流というか顔を見たのも一年ぶりだったから情も何もない。
「コンラッド公爵家にあんな馬鹿な子がいたのねぇ」
「どこかで頭でも打ったのかもしれませんね」
お母様は、アルトナー王家の人間だったから、コンラッド公爵家のことも私よりは知っていただろう。
でも、元婚約者様が産まれたのはお母様が嫁いでからだから、さすがに知らなくて当然だと思うわ。
綺麗な銀髪はキラキラしていて、瞳はとても深い紫色。
三十代後半という年齢なのに、まるで姉と言っても過言ではない美しい人。
「アチラでお茶を飲みましょう?お姉様はお元気だった?」
「ええ、とても」
お母様アリシア・メルキオールは、アルトナー王国女王陛下ブリジット・アルトナー様の五歳年下の妹だ。
私が元婚約者様との婚約を受け入れたのは、伯母様の国だからということもあった。
ただ私は婚約の最中に、伯母様に相談することはなかった。
子爵という立場だけは戴いたけど、アルトナー王国の決まり事を伯母と姪の間柄だといって、破らせるつもりはなかった。
だから、大人しく一年待ったのだ。
「あ、アリシア・・・」
「さ、クロエ。行きましょう?」
「・・・」
完全にお父様を無視しているわ。
あーあ。あんなに肩を落としちゃって。
私はお父様の様子を気にしながらも、お母様に付いて部屋を出た。
てっきりお母様のお部屋に招ばれるのかと思ったら、連れて行かれたのは温室だった。
世界でも珍しい硝子で覆われたその小屋は、温度が一定に保たれていて、庭で育てるのが難しい花も育てることが出来る。
お母様と結婚した時に、お父様が他国から技師を呼んで作られたもの、らしい。
今も庭師が丁寧に育てた花が、棚に並んで色鮮やかに温室を飾っている。
温室の中央に小さなテーブルと二脚の椅子が置かれていて、侍女がお茶の準備をしていた。
「改めて、お帰りなさい。クロエ」
「お母様・・・ご心配をおかけしました」
帝国の皇族には、優れた諜報部員がいる。
きっとお母様は、私がどんな対応をされていたのか、全て知っていたと思う。
それでも、実家であるアルトナー王国の王家を、そして姉である女王陛下を信用して、一年間口を出さずに待ってくれていた。
実際、辛い思いはしていない。
最初こそ「何コイツ?」とか思ったけど。
一応は、婚約者の義務として手紙の返信とかもしたけど。
全くもって交流をしようとしない元婚約者様には・・・
途中からは、ありがたいと思ってしまっていた。
だってあんな蔑んだ態度で会われたら、イラッとするもの。
それなら会わなければ面倒もないし、一年後にする解消もすんなり行く。
阿呆過ぎて、解消の際は女王陛下に面倒をかけてしまったけど、交流というか顔を見たのも一年ぶりだったから情も何もない。
「コンラッド公爵家にあんな馬鹿な子がいたのねぇ」
「どこかで頭でも打ったのかもしれませんね」
お母様は、アルトナー王家の人間だったから、コンラッド公爵家のことも私よりは知っていただろう。
でも、元婚約者様が産まれたのはお母様が嫁いでからだから、さすがに知らなくて当然だと思うわ。
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