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叱責は続きます。

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 確かに私は、シリルとの婚約に関して何も言わなかったし、貴族から色々意見が出ていたことも知っていたから、アルトナー王国の公爵令息との婚約にも何も言わなかった。

 だから、お父様を責め立てるのはちょっと違うかなと思う。

 発端が、拗らせたお母様への愛だったとしても、それに関する罰はお母様が与えてくれている。

 だけど・・・

「あそこまで常識知らずの阿呆だとは思わなかったって、調査はしたんですか?」

 皇族が嫁ぐんだから、その相手の調査をちゃんとすることは当たり前よね?

「しっ、したとも。紹介してくれた王配殿下から聞いて、調査はした」

「なのにあの、脳内雑草具合に気付かなかったと?」

「調査の段階では、多少は未熟な部分はあるけれど、努力家で問題なかったんだ。優秀な兄に多少コンプレックスは抱いていたけど」

 そりゃまぁ確かに、兄が王配になるからといって、今みたいな問題児だったなら弟に継がせず養子をとったわよね。

 でも婚約の顔合わせの時点で、私を見下していたわよ。

 正確に言えば、子爵家ということを。

「どうやら、自分が後継になれたことで、兄へのコンプレックスを変な形に拗らせたらしい。公爵家の後継になったのだから、兄に嫁をもらって、人間になるのだと」

「なら、私が帝国の皇女だと名乗っていたら、ああはならなかったと?」

「それは・・・分からないが。あの従妹だという男爵令嬢がアレやこれや耳触りの良い言葉ばかり吐いていたらしいから、あれ以上に増長していたかもしれん」

 私が皇女であることを隠していたのは、シリルが皇女だからではなく私だから婚約したいと言ってくれていたから。

 だから、お父様が別の婚約者を決めた時私は自分が皇女だとは名乗らないと決めた。

 お父様にも、アルトナーの王家にも絶対に口外しないようにと伝えた。

 私が身分を隠していたのが悪い。

 そう思っていそうだけどね、元婚約者様。

 私が本当に子爵令嬢だったとしても、あれは政略結婚なの。

 両家の当主が決めた婚約を、あんな風に蔑ろに扱っていいわけがないの。

「クロエ、何をしているの?お茶でも一緒に飲みましょう」

 背後から聞こえた声に、お父様がビクリと体を震わす。

 お父様は、皇帝陛下としては優秀で、周囲に敬愛される方だけど、家族・・・特にお母様には弱いのよね。

 腰下まで伸びた綺麗な銀髪をサラリと揺らし、アメジストのような瞳をした、女神のように美しい女性。

 お母様の登場だ。
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