拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

文字の大きさ
上 下
23 / 130

怒りを通り越して呆れました。

しおりを挟む
「お父様がお母様のことを愛してらっしゃるのは理解していましたが、その愛情の半分でも娘に注いでくださいませ」
 
 もう本当に、怒りを通り越して呆れたわ。

 お父様は心外だというお顔をされているけど、お父様のなさったことは娘にそう言われても仕方ないことなのよ。

「愛していないわけがないだろう。愛する妻との子供なんだぞ」

「なら、何故あんな婚約を決めたのです?もしかしてお姉様だけ愛していて、私のことはどうでも良かったのですか?」

 わざとらしく目を伏せて悲しげな表情をしてみたけど、本当はお父様が私のことも大切に思ってくれていることは理解っている。

 お父様の場合は、それ以上にお母様への愛が振り切れてるだけだ。

 お父様って執着系よね。

「すまない。まさか、あんな阿呆だとは思わなかったのだ」

 まぁそれは、私もそう思ったけど。
 貴族の、しかも公爵家の令息があそこまで常識知らずの阿呆だとは思わなかったわ。

 でも、アレが阿呆なのと、お父様がお母様への愛を拗らせたことが原因で、シリルとの婚約打診を無視したことは別問題だから。

「で?どうされるおつもりですか?お母様、お怒りなのでしょう?」

 そう。
お母様はお父様が勝手に私の婚約を決めたことにお怒りで、お父様はここ一年口を聞いてもらえていないらしい。

「本当に、マキシミリオンの国王陛下が恋敵なことだけが理由ですか?だってルーファス様の時は何も言わなかったじゃないですか」

「オーロラがルーファス殿にベタ惚れだったから、口を挟めなかったんだ」

「私が何も言わなかったから、ということですか」

 確かに私は、シリルからの婚約の申し込みに対して、何も言わなかった。

 貴族の中から、マキシミリオン王国との縁が強すぎると、自国の令息との婚約をという声が上がっていたこともある。

 ただ、その自国の令息との婚約が私もそれを避けるためにも良いかと思ったのよね。

 それに私自身、シリルのことを特別視していなかったということもある。

 お姉様の旦那様の弟。

 シリルは身分は王子だし、容姿も優れてる。

 今の令嬢たちの好みは、大人の男性系の凛々しい感じが主流だけど、私はどちらかというと可愛い感じの容姿が好きだから、凛々しいルーファス様より、可愛いイメージのシリルに好感は持った。

 でも、同い年だから兄でも弟でもないけど、家族となったのだから、それ以上の感情を持たないように自分に戒めをかけた。

 マキシミリオン王国だって、第三王子とはいえ、第二王子に続いてメルキオール帝国に婿にやるのは貴族の文句もあるだろうから。

 


しおりを挟む
感想 370

あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

処理中です...