拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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閑話:父の思惑は分からないけど②

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「僕を騙したのか」

 元婚約者様はそう言っていたけど、むしろ元婚約者様には本当のことをお伝えしていたと言いたい。

 小娘の私が子爵だと言っても、ほとんどの人は信じてくれないから、子爵令嬢ということを訂正はしていなかった。

 まぁ、未婚の私は子爵ではないし。

 ただ、どんな理由があったにしろ、婚約者となったからには、ちゃんと関係を築いていくつもりだったので、手紙で子爵位をもらったことは伝えていた。

 まぁ、最初から私を蔑んでいた元婚約者様は手紙もろくに読んでいなかったみたいだけど。

 そもそも、ルーベンス子爵はアルトナー王国女王陛下から賜った爵位だ。

 婚約が決まり、お母様とお姉様はそれはそれはお怒りになった。

 私は納得の上で婚約したのだけど、一応条件を付けた。

 それがルーベンス子爵令嬢という仮の姿だ。

 私は、メルキオール帝国の皇女としての私でなく、私個人を見てくれる人と結婚したい。

 だからわざわざ、領地のない存在しない子爵令嬢という立場を用意してもらったのだ。

 公爵令息ではあるけれど、今まで後継として学んでいなかった元婚約者様だから、家名だけでは分からないかもしれない。

 だから、王家からの要請という形での婚約にしたのだけど。

 無駄な気遣いだったわ。

 カロリーナ様、グレース様は気付いてらっしゃったというのに。

 正確にいうならば、高位貴族の方々は皆様気付いていらっしゃったわ。

 そしてなのだなと、何もおっしゃらなかった。

 公爵家を継ごうという方が、あそこまで阿呆だとは。

 まぁ、学園での成績も底辺を横這いだったし、気付かなくても不思議はないのかしらね。

 私があえて皇女だと言わなかったことを騙したと言われても、別にコンラッド公爵家に嫁入りしたら関係ない話なのだから、言わなかったことを責められる覚えはない。

 お父様が何を考えて、私と元婚約者様との婚約を決めたのかは知らないけど、残念ながら、この婚約はなくなった。

 お母様とお姉様に相当絞られたらしいから、シリルとの婚約を認めるかどうかはともかく、新たな婚約者を見つけてきたりはしないだろう・・・多分。

 シリルとの婚約を、そこまで嫌がる意味が分からないのよね。

 確かに権力がマキシミリオン王国に偏るけれど、ルーファス様もシリルも、我が国の政治に口を挟んだりしないと思うけど。

 戻ったら、ちょっとお父様に聞いてみようかしら。

 ちゃんした理由なら、お母様たちのご機嫌も直ると思うのよ。

 いまだに口を聞いてもらえてないというし。

 お母様ラブなお父様には、辛いでしょうね。





 
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