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第19話
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ニケはマグエルを冷たく見下ろした後、ロートレック侯爵へと向き直った。
「マグエル様には、エリン様とご一緒にフォレスト王国のビスクランド伯爵家へ奉公に行ってもらいます。フォレスト王国なら我がセラフィム子爵家の親戚だらけですから、厳しくマグエル様たちを教育してくださるでしょう」
「フォレスト王国に・・・」
「やり方は大変間違っておられますけど、今ならセラフィム子爵家に大きな損害を与えたというわけでもありませんし、廃籍されますしね。ですが、伯爵家に婿入りなどされて貴族姓を名乗られては困ります。アシュタル王国の品位が下がりますから。かと言って、お2人が平民として生活していけるとも思えません。知った人間のいない場所で苦労されるのが1番堪えるのではないでしょうか」
「そうですね。ご配慮いただきありがとうございます」
「いっ、嫌だっ!!」
ニケの説明に、深々と頭を下げるロートレック侯爵と対照的に、マグエルは嫌だと暴れ出す。
「ニケっ!何故、そんな酷いことを言うんだ!?僕を愛しているだろう?僕と結婚してロートレック侯爵家に嫁ぐのだろう?」
「マグエル!!いい加減にしろっ!!」
「かまいませんわ、ロートレック侯爵様。マグエル様には、私がご説明しますから」
息子を押さえつけ、黙らせようとした侯爵は、ニケに促されて息子から手を離した。
そのことに、マグエルはニケがやはり自分のことを好いていて、助けてくれるのだと思った。
「ニケ!」
「まずは、その名前を呼ぶのをやめていただきましょうか。私、先程申しましたわよね?セラフィム子爵令嬢とお呼び下さいと。それを何度もニケと呼び捨てになさって。腹立たしくて仕方ありませんわ」
「ニケ?」
「その頭はお飾りですの?中身が入ってないのだろうとは思っておりましたけど、そのような愚かな人間が、アシュタル王国で侯爵家を名乗れるとでもお思いなのですか?いいですか?私の家が何であろうと、婚約者がいる人間がその婚約者を蔑ろにして他のご令嬢を優先するなど、ありえないことです。ですから、セラフィム子爵家とロートレック侯爵家の婚約は解消しました。婚約者でもない方に名前を呼び捨てにされるなど不快極まりません。私が、貴方を好きになったことも、ましてや愛したことも1度もありません。勘違いなさらないで下さい」
今まで見たこともない、まるで虫けらを見るような冷たい目で見られ、聞いたことのない冷たい声で全てを否定され、マグエルはその場に崩れ落ちた。
「マグエル様には、エリン様とご一緒にフォレスト王国のビスクランド伯爵家へ奉公に行ってもらいます。フォレスト王国なら我がセラフィム子爵家の親戚だらけですから、厳しくマグエル様たちを教育してくださるでしょう」
「フォレスト王国に・・・」
「やり方は大変間違っておられますけど、今ならセラフィム子爵家に大きな損害を与えたというわけでもありませんし、廃籍されますしね。ですが、伯爵家に婿入りなどされて貴族姓を名乗られては困ります。アシュタル王国の品位が下がりますから。かと言って、お2人が平民として生活していけるとも思えません。知った人間のいない場所で苦労されるのが1番堪えるのではないでしょうか」
「そうですね。ご配慮いただきありがとうございます」
「いっ、嫌だっ!!」
ニケの説明に、深々と頭を下げるロートレック侯爵と対照的に、マグエルは嫌だと暴れ出す。
「ニケっ!何故、そんな酷いことを言うんだ!?僕を愛しているだろう?僕と結婚してロートレック侯爵家に嫁ぐのだろう?」
「マグエル!!いい加減にしろっ!!」
「かまいませんわ、ロートレック侯爵様。マグエル様には、私がご説明しますから」
息子を押さえつけ、黙らせようとした侯爵は、ニケに促されて息子から手を離した。
そのことに、マグエルはニケがやはり自分のことを好いていて、助けてくれるのだと思った。
「ニケ!」
「まずは、その名前を呼ぶのをやめていただきましょうか。私、先程申しましたわよね?セラフィム子爵令嬢とお呼び下さいと。それを何度もニケと呼び捨てになさって。腹立たしくて仕方ありませんわ」
「ニケ?」
「その頭はお飾りですの?中身が入ってないのだろうとは思っておりましたけど、そのような愚かな人間が、アシュタル王国で侯爵家を名乗れるとでもお思いなのですか?いいですか?私の家が何であろうと、婚約者がいる人間がその婚約者を蔑ろにして他のご令嬢を優先するなど、ありえないことです。ですから、セラフィム子爵家とロートレック侯爵家の婚約は解消しました。婚約者でもない方に名前を呼び捨てにされるなど不快極まりません。私が、貴方を好きになったことも、ましてや愛したことも1度もありません。勘違いなさらないで下さい」
今まで見たこともない、まるで虫けらを見るような冷たい目で見られ、聞いたことのない冷たい声で全てを否定され、マグエルはその場に崩れ落ちた。
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