あなたなんて大嫌い

みおな

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第18話

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 結局、マグエルは父親であるロートレック侯爵に引き摺られるように、玄関から外に出された。

 ふと思い立って、ニケはマグエルへと声をかける。

「マグエル・ロートレック様」

「にっ、ニケ!ぼっ、僕のことを愛しているだろう?出会ってからずっと僕の言うことを聞いて、微笑んでくれていたじゃないかっ!」

 相変わらず、斜め上の考えの持ち主である。ニケは、声をかけたから勘違いしたのかしらと首を傾げた。

「政略結婚といえど、婚約者に寄り添おうとするのは、当然のことでしょう?あなたの言うの令嬢ですけど、そのくらいの常識は持ち合わせていますのよ?」

「だ、だがっ!僕がミリィやエリンを優先しても何も言わなかったじゃないかっ!」

「都合の良い記憶ですこと。私、何度か注意しましたわ。そうしたら、体調の悪いミリィや、友達のいないエリンを気遣えない酷い女だと罵ったお手紙をお送りになったのをお忘れ?ああ。ちゃんと婚約解消の証拠として王家に送ってありましてよ」

 ニケの言葉に、マグエルはパクパクと声もなく口を開いている。

 (まぁ!金魚みたい)

 ニケはニコニコと微笑みを絶やしていないが、その微笑みの奥にある怒りに気付いているロートレック侯爵は冷や汗タラタラだ。

 殴りつけても息子を黙らせたい。だが、勝手にそんなことをすれば、目の前のセラフィム子爵家兄妹の怒りをさらに買うだろう。

 切り捨てるしかない亡き妻の忘れ形見を、侯爵は見つめることしか出来なかった。

「ロートレック侯爵様。ミリィ様がセラフィム子爵の価値を理解していなかったのは、養女になってから出歩くこともなかったことで目を瞑りますけど、さすがに次男だとはいえ、の婚約者にと望んだ息子の教育が出来ていないのではなくて?」

「・・・その通りでございます。申し訳ありません」

 まさか、ここまで愚かだとは思わなかったのだ。

 嫡男であるリオルを厳しく育てた。そして、リオルはその期待に応えて立派な後継へと育った。
 なのに、リオルはある日突然、家を出て行ってしまった。
 八方手を尽くして探したが見つからず、やむなくマグエルを後継にするしかなかったのだ。

 だが、リオルに出ていかれた恐怖からマグエルを厳しく育てきることが出来なかった。
 甘やかされて育ったマグエルが、厳しい後継者教育に耐えられると思えなかったからだ。

 それでも、ロートレック侯爵は厳しく育てるべきだったのだ。
 そうすれば、少なくともセラフィム子爵家の怒りを買うことはなかったのだから。
 
 
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