あなたなんて大嫌い

みおな

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第17話

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「王太子殿下とニケが、遠い親戚?」

 マグエルが呆然と呟いている。その様子を見て、ロートレック侯爵の言葉はカケラも残ってないのに、王太子殿下の言葉なら届くのかとニケは呆れてしまう。

 まぁ、それでも多少なりとも理解したのなら、これですんなりと帰ってくれるだろう。そう思っていたのに。

「ニケ。君は僕を愛しているだろう?僕も君のことを愛しているんだよ」

 ニケからすれば意味不明なことを言いながら、マグエルがニケに近づこうと階段へと向かってくる。

 (キモい。キモい!キモい!!)

 その貼り付けたような笑顔も、言ってる内容も、気持ち悪くて仕方ない。

 どこをどうすれば愛しているなんて言葉が出るのか、ニケには理解できない。

 ミリィを優先したのは、まぁ百歩譲って許せるとしても、デートに幼馴染のエリンを毎回連れて来たことは、馬鹿にしているにも程がある。

 しかも、そのことに文句を言ったら、1ヶ月も会いもしなかったくせに。

 それで愛してるなんて言われて、信じる人間がいるなら連れて来てみろと思う。

「あなたが愛しているのは、義妹のミリィと幼馴染のエリンでしょう」

「誤解だよ。僕は君のことしか愛していない」

「婚約者より2人を優先しておいて、よくもそんなことが言えるな」

 ラギトの呆れを含んだ声に、マグエルはその貼り付けた笑顔のまま振り返る。

「王太子殿下。これは婚約者同士の話です。殿下はお帰り願えますか?」

「帰るのはお前だ。この阿呆がっ!!」

 突然、響き渡った怒声と、マグエルの後頭部を殴り飛ばした姿に、ニケは目を丸くした。

 現れたのは、ロートレック侯爵と兄のノクスだ。

 ロートレック侯爵は顔を真っ赤にしていて、拳はプルプルと震えている。
 ノクスは静かにマグエルを見ているが、その能面のような表情を見て、ニケはノクスがありえないほどに怒っていることを理解した。

 (マグエル・・・御愁傷様)

 ニケは兄の腹黒さを誰よりもわかっている。

 セラフィム子爵家の人間は、先祖であるサードニクス公爵のを誰よりも強く引き継いでいる、と言われている。
 優しく微笑んでいながら、やることは腹黒で辛辣。
 セシル・サードニクス公爵はそういう人だったらしい。

 そして、その先祖に、誰よりも兄ノクスは似ていた。

 目の前の王太子殿下も冷酷腹黒王子と呼ばれている程だし、マグエルに明るい未来はないだろう。

「ち、父上・・・これは、その、違うのです」

「何が違うというのだ!お前の阿呆さ加減にはウンザリだ。ラギト王太子殿下の前でまで醜態を晒しおって!!」

 あー。分かる。出来ることなら知られたくなかったわよね、息子がこんなに阿呆だなんて。
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