16 / 28
第16話
しおりを挟む
「ニケ!頭を下げて素直に謝るなら、婚約関係を継続してやる!大体、ロートレック侯爵家との縁を結びたいのだろう?なら、素直に僕の言うことを聞いていれば良いんだ」
この世界には、何度言っても物事を理解せず、自分の世界でしか物事を考えられない人間がいることを、ニケは思い知った。
こんなのと結婚しないで本当に良かった。セラフィム子爵家の汚点になるところであったと、ニケは息を吐く。
「マグエル・ロートレック侯爵令息様。婚約者でもない私のことは、セラフィム子爵令嬢とお呼び下さい。名前で呼ばれるなど不快ですわ」
「なっ!!」
「それから、婚約解消の書類は既に王家に提出済みですから、婚約関係の継続などできませんし、私はするつもりもありません。あと、ついでにお伝えしますと、セラフィム子爵家がロートレック侯爵家と縁を結びたいのではありません。ロートレック侯爵家が我が家と縁を結びたかったみたいですよ」
きっと言っても理解しないだろうが、黙って言われるままでいるつもりはない。
案の定、マグエルは唾を飛ばしながら言い返して来た。
「そんなわけあるかっ!負け惜しみも大概にしろ!聞かれましたか?王太子殿下っ!」
「ああ。聞いた。マグエル、お前は本当に侯爵家の子息なのか?我が国の貴族にこんな馬鹿がいるとは思わなかった」
「ぽぇ?」
ラギトの返答が予想外だったのだろう。マグエルが妙な声を出している。
ぽぇってなに?頭の中の空気か何かが抜けたの?
頭の中、脳みそないよね?空気詰まってるだけだよね?それ、抜けたのかな?
「王太子・・・殿下?」
「その空っぽの頭に入るのかわからないが、よく聞くといい。ニケ・セラフィム子爵令嬢の母親セラフィム子爵夫人は、ケルドラード皇国の前皇帝陛下とフォレスト王国公爵家のご令嬢のご息女だ」
「は?」
「そして、セラフィム子爵家嫡男のノクス殿の奥方はフォレスト王家の末娘。ニケ嬢の姉君の夫は、当時ケルドラード皇国宰相を務めていたビスクランド侯爵の孫だ。ちなみに、そのビスクランド侯爵夫人は、我がアシュタル王国の先先代の国王陛下の従妹だから、ニケ嬢と僕は遠縁の親戚関係だな」
「は?」
やはり、理解できていないようだ。
まぁ、脳みその代わりに空気が詰まっているのだから、理解できないわよね、とニケは苦笑する。
それでも自身の父親や、ニケに言われても理解できないことも、王太子殿下から言われればカケラくらいは頭に入るかもしれない。
普通は物心つく頃には、親が子供にこの国の貴族については教えるものだ。
子供だからといって、何か問題を起こしたら、相手によっては家を揺るがす大問題になるからだ。
そして、普通の貴族の子供は、セラフィム子爵家に手出ししてくるようなことはない。
仲良くしようとすり寄ってくることはあっても、だ。それは、正しくセラフィム子爵家の価値を理解しているということ。
ニケは、その下心が嫌で、その下心を感じさせないマグエルに、出会った時は多少の好意を持てたのだが、下心がないのではなくセラフィム子爵家の価値を理解していないというオチであった。
この世界には、何度言っても物事を理解せず、自分の世界でしか物事を考えられない人間がいることを、ニケは思い知った。
こんなのと結婚しないで本当に良かった。セラフィム子爵家の汚点になるところであったと、ニケは息を吐く。
「マグエル・ロートレック侯爵令息様。婚約者でもない私のことは、セラフィム子爵令嬢とお呼び下さい。名前で呼ばれるなど不快ですわ」
「なっ!!」
「それから、婚約解消の書類は既に王家に提出済みですから、婚約関係の継続などできませんし、私はするつもりもありません。あと、ついでにお伝えしますと、セラフィム子爵家がロートレック侯爵家と縁を結びたいのではありません。ロートレック侯爵家が我が家と縁を結びたかったみたいですよ」
きっと言っても理解しないだろうが、黙って言われるままでいるつもりはない。
案の定、マグエルは唾を飛ばしながら言い返して来た。
「そんなわけあるかっ!負け惜しみも大概にしろ!聞かれましたか?王太子殿下っ!」
「ああ。聞いた。マグエル、お前は本当に侯爵家の子息なのか?我が国の貴族にこんな馬鹿がいるとは思わなかった」
「ぽぇ?」
ラギトの返答が予想外だったのだろう。マグエルが妙な声を出している。
ぽぇってなに?頭の中の空気か何かが抜けたの?
頭の中、脳みそないよね?空気詰まってるだけだよね?それ、抜けたのかな?
「王太子・・・殿下?」
「その空っぽの頭に入るのかわからないが、よく聞くといい。ニケ・セラフィム子爵令嬢の母親セラフィム子爵夫人は、ケルドラード皇国の前皇帝陛下とフォレスト王国公爵家のご令嬢のご息女だ」
「は?」
「そして、セラフィム子爵家嫡男のノクス殿の奥方はフォレスト王家の末娘。ニケ嬢の姉君の夫は、当時ケルドラード皇国宰相を務めていたビスクランド侯爵の孫だ。ちなみに、そのビスクランド侯爵夫人は、我がアシュタル王国の先先代の国王陛下の従妹だから、ニケ嬢と僕は遠縁の親戚関係だな」
「は?」
やはり、理解できていないようだ。
まぁ、脳みその代わりに空気が詰まっているのだから、理解できないわよね、とニケは苦笑する。
それでも自身の父親や、ニケに言われても理解できないことも、王太子殿下から言われればカケラくらいは頭に入るかもしれない。
普通は物心つく頃には、親が子供にこの国の貴族については教えるものだ。
子供だからといって、何か問題を起こしたら、相手によっては家を揺るがす大問題になるからだ。
そして、普通の貴族の子供は、セラフィム子爵家に手出ししてくるようなことはない。
仲良くしようとすり寄ってくることはあっても、だ。それは、正しくセラフィム子爵家の価値を理解しているということ。
ニケは、その下心が嫌で、その下心を感じさせないマグエルに、出会った時は多少の好意を持てたのだが、下心がないのではなくセラフィム子爵家の価値を理解していないというオチであった。
204
お気に入りに追加
690
あなたにおすすめの小説
言葉にしなくても愛情は伝わる
ハチ助
恋愛
二週間前に婚約者のウィルフレッドより「王女殿下の誕生パーティーでのエスコートは出来なくなった」と謝罪と共に同伴の断りを受けた子爵令嬢のセシリアは、妊娠中の義姉に代わって兄サミュエルと共にその夜会に参加していた。すると自分よりも年下らしき令嬢をエスコートする婚約者のウィルフレッドの姿を見つける。だが何故かエスコートをされている令嬢フランチェスカの方が先に気付き、セシリアに声を掛けてきた。王女と同じく本日デビュタントである彼女は、従兄でもあるウィルフレッドにエスコートを頼んだそうだ。だがその際、かなりウィルフレッドから褒めちぎるような言葉を貰ったらしい。その事から、自分はウィルフレッドより好意を抱かれていると、やんわりと主張して来たフランチェスカの対応にセシリアが困り始めていると……。
※全6話(一話6000文字以内)の短いお話です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
恋人が聖女のものになりました
キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」
聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。
それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。
聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。
多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。
ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……?
慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。
従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。
菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる