あなたなんて大嫌い

みおな

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第14話

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「お嬢様・・・あの・・・」

 珍しく言い淀んでいる侍女に、ニケは首を傾げた。

「どうしたの?」

「それが、その・・・ロートレック侯爵子息様が・・・」

「マグエル様が?まさか、来てるの?」

 ニケの問いかけに、侍女はコクリと頷く。どうやら、マグエルがやって来ているらしい。
 そして、この侍女の困り具合からして謝罪のために訪れたのではないのだろう。

 馬鹿はとことん馬鹿である。
面倒なので会いたくない。というか、もう顔も見たくない。
 だが、いつまでも玄関で騒がれたくないし、侍女や執事たち使用人に迷惑をかけるのも申し訳ない。

「わかったわ。私が行くわ」

「よろしいのですか?」

「玄関にいつまでも居座られたら、みんな仕事にならないでしょう?玄関でお帰り願うからいいわ」

 相手は侯爵家の子息だ。使用人たちは強く出ることは出来ないから、仕方なくニケの元へと知らせに来たのだ。

 ニケは部屋から出ると、2階の階段の上から玄関で喚き散らすマグエルを見下ろした。

「ニケっ!!」

「呼び捨てにしないでくださる?」

 思ったよりも冷ややかな声が出た。
ニケの冷たい声に一瞬固まったマグエルだが、一呼吸置いた後に顔を真っ赤にさせた。

「しっ、子爵家風情が侯爵家の僕に対して不敬だろうっ!!」

「子爵家風情ね」

「おっ、お前は僕が好きだから婚約を申し込んできたのだろう!僕の気を引きたくて、婚約解消などと・・・」

「お父様から伺っていませんの?それとも理解できていませんの?」

 馬鹿さ加減にウンザリする。
あれだけ侯爵家からの申し込みだと言ってるのに、何故理解しないのか。

 確かにセラフィム家は子爵家だ。その成り立ちの細かいところまでは分からなかったとしても、ニケの母親がケルドラード皇国皇族の血を引いていることはほとんどの貴族が知っていることだ。

 まぁ相手が馬鹿なので、それに気づかなかったとしよう。だが、ニケの義姉であるアリエルがフォレスト王国の王族なことはわかりそうなものだ。

 少なくとも婚約者の家系である。
兄や姉の結婚相手のことくらい知っていてもおかしくないはずだ。

「ひとつお聞きしますけど、謝罪する気はありますの?」

 ないと言えば、ニケはそのままマグエルを叩き出すつもりだ。
 逆に、謝罪に来たと言うのなら、一応は聞くつもりであった。

 (まぁ、想像の斜め上を行く人だから、謝罪なわけはないわよね)

「何故、僕が謝らなければならない!」

「だから、お前は廃籍されるんだ」

 いきなりマグエルの襟首を掴んで、後ろに引き倒した男に、ニケは目を丸くした。

 輝く金の髪と瞳。
アシュタル王国王太子ラギト・アシュタル、その人だったからだ。

 




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