あなたなんて大嫌い

みおな

文字の大きさ
上 下
12 / 28

第12話

しおりを挟む
 ニケ・セラフィム子爵令嬢。
子爵であるオルテスとビアンカ・ケルドラードを両親に持ち、兄にノクス、姉にクレティアがいる。

 ニケの母親のビアンカは、ケルドラード皇国前皇帝ジーク・ケルドラードの三女なのである。
 しかも、ジークの妻は、フォレスト王国サードニクス公爵家の長女シリスで、シリスの母親アリスの大叔父がアシュタル王国の当時の宰相であった。

 すでにそれだけでも手を出してはいけない家系だというのに、ノクスの妻アリエルはフォレスト王家の末娘で、クレティアの夫ブラッドはケルドラード皇国の当時の宰相であったビスクランド侯爵の来孫なのである。

 ビスクランド家は、陰でビスクランド帝国とすら噂されていた。

 それは、フォレスト王国で当時伯爵をしていたイヴァクの妻ヴィオラが服飾デザインを手がけ、フォレスト王国だけでなくケルドラード皇国、アシュタル王国を席巻していたからだ。

 そして、イヴァクの娘であるアリスが当時の王弟の息子であるセシル・サードニクスに嫁ぎ、友人であったというケルドラード皇国皇帝の息子ジークと自身の娘のシリスが婚姻した。

 絶対に手を出してはいけない家系。それがビスクランド家なのだ。
 そして、セラフィム子爵家はそのビスクランド家以上に、危険な存在であることなど、貴族なら誰でも知っていることだ。

 それをまさか、侯爵家の子息が理解していないとは。

 ロートレック侯爵は、冷や汗をかきながら、ニケの話に頷くしかなかった。

 ニケ・セラフィム子爵令嬢は、両親はもちろんのこと、兄や義姉、姉や義兄にも溺愛されていると聞く。
 つまりは、ニケを怒らせたら最後、侯爵家など簡単に潰されてしまうということなのだ。

 行方不明のリオルを探し出そうと思っていたが、ニケがミリィを後継にしろと言うのならそれに従う他ない。

 マグエルに関しては本人に言った通りに廃籍するしかない。

 亡くなった妻には申し訳ないが、あれほど言い聞かせたと言うのに、ニケ嬢を大切にしなかったマグエルが悪いのだ。

 まさか自分の息子が婚約者を蔑ろにして、義妹や幼馴染を優先する馬鹿だとは思いもしなかった。

 ミリィがニケに謝罪するために歩いてまでセラフィム子爵家に来たと聞いて驚いたが、そのおかげで、ロートレック侯爵家は存続することが出来る。

 この際、セラフィム子爵家推薦の子息をミリィの婚約者にして、ミリィにもセラフィム子爵家に関してよく教えなければならない。

 本来なら、皇国の皇女が降嫁した時点で、陞爵していておかしくないのだ。
 まるで、爵位が低いままで他家の出方を見ているような、そんな不気味さがセラフィム子爵家にはあった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

言葉にしなくても愛情は伝わる

ハチ助
恋愛
二週間前に婚約者のウィルフレッドより「王女殿下の誕生パーティーでのエスコートは出来なくなった」と謝罪と共に同伴の断りを受けた子爵令嬢のセシリアは、妊娠中の義姉に代わって兄サミュエルと共にその夜会に参加していた。すると自分よりも年下らしき令嬢をエスコートする婚約者のウィルフレッドの姿を見つける。だが何故かエスコートをされている令嬢フランチェスカの方が先に気付き、セシリアに声を掛けてきた。王女と同じく本日デビュタントである彼女は、従兄でもあるウィルフレッドにエスコートを頼んだそうだ。だがその際、かなりウィルフレッドから褒めちぎるような言葉を貰ったらしい。その事から、自分はウィルフレッドより好意を抱かれていると、やんわりと主張して来たフランチェスカの対応にセシリアが困り始めていると……。 ※全6話(一話6000文字以内)の短いお話です。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈 
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください。 そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。 政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。 しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。 それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。 よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。 泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。 もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。 全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。 そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

恋人が聖女のものになりました

キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」 聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。 それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。 聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。 多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。 ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……? 慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。 従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。 菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

【完結】婚約者が恋に落ちたので、私は・・・

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
ベアトリスは婚約者アルトゥールが恋に落ちる瞬間を見てしまった。 彼は恋心を隠したまま私と結婚するのかしら? だからベアトリスは自ら身を引くことを決意した。 --- カスティーリャ国、アンゴラ国は過去、ヨーロッパに実在した国名ですが、この物語では名前だけ拝借しています。 12話で完結します。

処理中です...