あなたなんて大嫌い

みおな

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第11話

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「お嬢様。ロートレック侯爵様たちがお見えになりました」

 客室で、眠るミリィを見ていたニケは、侍女に呼ばれて立ち上がった。

「分かったわ。ミリィ様を見ていてちょうだい」

 謝罪のあと、気を失ったミリィを客室へと運んだ。歩いて来た疲れが出たのか、微熱を出していた。

 青白い顔のまま眠るミリィの髪を撫でた。頬に残る涙の跡をそっと指で拭ってやる。

 (さて片付けてきましょうか)

 ニケが応接室に入ると、ロートレック侯爵と侯爵夫人が立ち上がって頭を下げてきた。
 2人にミリィを迎えに来るようにとは言ったが、やはりマグエルは来なかったようだ。

(アンタが一番に謝罪に来るべきだと言うのに。ほんっとに馬鹿)

 きっとあの馬鹿は、子爵家風情に何故侯爵家である自分が謝らなければならないのだと思っているのだろう。

「ニケ様。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「ロートレック侯爵。私が謝って欲しいのは、侯爵にではないのですが?」

「も、申し訳ございません。マグエルにも付いてくるようには言ったのですが」

 廃籍とまで言われて呆然としたとはいえ、セラフィム子爵家謝罪には来れないと言うことかしら。

「上辺だけ謝って貰っても仕方ないですし、婚約破棄はさせていただきますけど。条件によっては、ロートレック侯爵家有責ではなく、マグエル様個人有責にしても構いませんよ」

 ニケも最初は、親の責任として侯爵家有責にするつもりだった。
 婚約破棄の原因がマグエル当人と、その義妹のミリィ、そして伯爵家のエリンだったからだ。

 だが、ミリィが謝罪に訪れたことで、その気持ちが変化した。

 ミリィを許すのなら、ロートレック侯爵家有責ではなく、マグエル個人有責にするべきだと。

「そ、それは本当ですか」

「ええ。ミリィ様の謝罪を受けましたの。お父様である侯爵にバレないようにと、我が家まで歩いて来られたそうです。そのせいで現在気を失われて眠っていらっしゃいます。ああ、大丈夫です。医師に見せましたら、少し熱はありますが、大事には至らないそうですから。それで、条件ですけど、まず1つ目はマグエル様にはロートレック侯爵家から出ていただきます。他所に婿に入るなり平民になるなり、何とでもしてもらって下さい。2つ目はミリィ様に婿を取り、ロートレック侯爵家の後継にすること」

 まぁ、の貴族は、セラフィム子爵家の価値を分かっているから、マグエルを婿に取ろうなどと思わないだろうが。
 マグエル本人とエリンは全く分かっていないようだから、もしかしたらネーヴェ伯爵家が婿に取るかもしれない。

 まぁ、取ろうと取るまいと、あの2人に明るい未来はないけど。

 ニケは、義姉アリエルや兄ノクスの怒りを思い出して、ため息を吐いた。
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