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第1話
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「ニケお嬢様。ロートレック侯爵家よりお手紙が届いています」
侍女から手紙を受け取ったニケは、大きくため息を吐いた。
婚約者であるロートレック侯爵家次男からの手紙だ。普通なら嬉しくて、笑顔で受け取るところだが、ニケはその書かれている内容が読まなくても想像できて、うんざりしていた。
「はぁぁ。今回はどっちかしら?」
手紙を開いてみると、案の定いつも通りの文面だった。
『すまない。ミリィが体調を崩している。明日は行くことが出来ない。この埋め合わせはまたの機会に必ず』
もう何度目か分からない断りの手紙。
数えるのも嫌になっていた。少なくとも、もう1ヶ月以上一緒に出かけていない。正確に言うなら、顔すら見ていない。
ミリィというのは、ニケの婚約者であるマグエル・ロートレックの義妹だ。
ロートレック侯爵の後妻の連れ子で、マグエルの3歳年下の義妹。
マグエルはこの義妹を溺愛していて、デートのキャンセルの半分はミリィの体調不良だった。
「今日はミリィの方なのね」
ため息混じりにそう呟くと、ニケは手紙をゴミ箱に放り投げる。
本当にウンザリだ。1ヶ月以上も放置する婚約者など、あの手紙同様捨ててしまいたい。
大体、この婚約自体、ニケが望んだものじゃない。
ロートレック侯爵家からの申し込みで、子爵家としては断れなかったのだ。
ニケとて貴族の娘である。政略結婚の意味もわかっている。
だから、父親に打診された時、断らなかった。
特別好きな相手でもなかったが、嫌いでもなかった。
父親も母親も兄も姉も、断って構わないと言った。
だけど、別段好きな相手もいなかったし、侯爵家からの強い希望だったから受けたのだ。
どうやら、婚約を希望したのはマグエル本人ではなかったのだと、今となっては理解している。
だが3年前は、そこまで望んでくれるなら、いい関係を築けるだろうと楽観していた。
つくづく、自分の考えの甘さに呆れる。
セラフィム子爵家と縁を結びたかったのは、ロートレック侯爵の方なのだろう。
(いい加減、婚約解消するべきかしら)
マグエル有責の証拠集めをする必要があるが、父親も兄も姉も喜んで婚約解消に力を貸してくれるだろう。
義妹の体調が本当に悪いのなら、それを置いてでも婚約者を優先しろとは言いにくい。その場合、マグエル有責にするのは厳しいだろう。
それでも、婚約者を蔑ろにしていいわけではないが、一応謝罪の手紙は出していることもある。
(まぁ、ミリィだけじゃないものね)
マグエルがニケとの約束を反故にする理由は、もう1人にもあるのだ。
侍女から手紙を受け取ったニケは、大きくため息を吐いた。
婚約者であるロートレック侯爵家次男からの手紙だ。普通なら嬉しくて、笑顔で受け取るところだが、ニケはその書かれている内容が読まなくても想像できて、うんざりしていた。
「はぁぁ。今回はどっちかしら?」
手紙を開いてみると、案の定いつも通りの文面だった。
『すまない。ミリィが体調を崩している。明日は行くことが出来ない。この埋め合わせはまたの機会に必ず』
もう何度目か分からない断りの手紙。
数えるのも嫌になっていた。少なくとも、もう1ヶ月以上一緒に出かけていない。正確に言うなら、顔すら見ていない。
ミリィというのは、ニケの婚約者であるマグエル・ロートレックの義妹だ。
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「今日はミリィの方なのね」
ため息混じりにそう呟くと、ニケは手紙をゴミ箱に放り投げる。
本当にウンザリだ。1ヶ月以上も放置する婚約者など、あの手紙同様捨ててしまいたい。
大体、この婚約自体、ニケが望んだものじゃない。
ロートレック侯爵家からの申し込みで、子爵家としては断れなかったのだ。
ニケとて貴族の娘である。政略結婚の意味もわかっている。
だから、父親に打診された時、断らなかった。
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父親も母親も兄も姉も、断って構わないと言った。
だけど、別段好きな相手もいなかったし、侯爵家からの強い希望だったから受けたのだ。
どうやら、婚約を希望したのはマグエル本人ではなかったのだと、今となっては理解している。
だが3年前は、そこまで望んでくれるなら、いい関係を築けるだろうと楽観していた。
つくづく、自分の考えの甘さに呆れる。
セラフィム子爵家と縁を結びたかったのは、ロートレック侯爵の方なのだろう。
(いい加減、婚約解消するべきかしら)
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義妹の体調が本当に悪いのなら、それを置いてでも婚約者を優先しろとは言いにくい。その場合、マグエル有責にするのは厳しいだろう。
それでも、婚約者を蔑ろにしていいわけではないが、一応謝罪の手紙は出していることもある。
(まぁ、ミリィだけじゃないものね)
マグエルがニケとの約束を反故にする理由は、もう1人にもあるのだ。
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