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マクラーレン王国へ

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 ローゼン王国を出て、マクラーレン王国に入った。

 両親も姉夫婦も使用人たちも、もう少しいれば良いと言ってくれたけど、マクラーレン王国でお世話になったトライデント公爵家にも寄りたいし、それに長々とは旅行出来ないわ。

 王家から護衛をお借りしているんだもの。

 マクラーレン王国では、王太子殿下とルージュ様のことがあったから、寄ることは少し迷った。

 確かに王太子殿下は、間違ったことをしたと思う。

 でももし私と会わなければ、ルージュ様への執着はあるものの、大きな波乱もなく二人は結婚して、生きていたかもしれない。

 終わったことをどうこう言っても仕方ないし、『もし』という仮定の話をしたところでどうしようもないことは分かるけど、家族は簡単に消化出来ないと思う。

 だから、悲しみを堪えているところに、私が現れるのは良くない気がして、寄らずに帰ろうかと思ってた。

 だけど旅行に出る前に皇帝陛下が、マクラーレン王国にいるスオン殿下と顔合わせしておくと良いとおっしゃったの。

 だから、マーガレット様たちにご挨拶をして、スオン殿下にお会いしたらマクラーレン王国はすぐに辞するつもり。

 引け目を感じるというのではなくて、わざわざ波風立てなくてもいいと考えてるだけ。

 あの頃・・・
逃げるようにマクラーレン王国に留学したあの頃なら、きっと引け目を感じていたわね。

 少しは成長したということかしら。

「マーガレットおば様」

「ジュエルさん!結婚おめでとう!」

「ありがとうございます。ごめんなさい、招待状を送らなくて。両親と姉の手前、誰にも送らなかったのです」

「ふふっ。大丈夫よ、理解っているわ。フレグランスさんが行かないのに、私が行くわけにはいかないもの。でも、ご両親もジュエルさんの花嫁姿を見たかったでしょうね」

 そうね。
一応、絵姿は描いてもらってお父様たちにお渡ししたけど、親だもの、直接見たかったかもしれないわね。

 でも・・・
さすがにあのウェディングドレスは持って来れないし、二度着るというのも・・・

「ごめんなさいね、主人はどうしても仕事を休むわけにはいかなくて」

「おじ様はお元気ですか?」

「ええ。この後、王宮に行くのよね?もしかしたら会えるかもしれないわね。一応、お祝いは預かっているから、すれ違ったらいけないから私から渡しておくわね」

「ありがとうございます」

 ルークお義兄様のお父様、トライデント公爵様はマクラーレン王国の宰相様だから、確かにスオン殿下に会いに行った時に会えるかもしれない。

「おば様。あの、夫です」

「初めまして。ハデス・ヴェルセットと申します。学園時代に、ご子息のルーク卿には親しくしていただきました」

 そういえば、ハデス様はお姉様たちと同じ学園に、しばらく通われていたのだったわ。

 おば様とは面識がなかったのね。
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