嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

新婚生活五日目

「新婚旅行、ですか？」

　朝食中にハデス様に言われたのは、お披露目ついでに旅行に行こうということだった。

　結婚式から五日。
なんていうか、ものすごく濃密な五日だったわ。

　ハデス様が初夜に、その・・・とても手加減してくださっていたのが、この四日でよく分かったもの。

　まさか、足が立たなくなることがあるなんて思わなかった。

　閨教育で聞いたけど、あんなの迷信？大袈裟？だと思っていたわ。

　今日で五日だから、そろそろ寝所に籠るのも終わりよね？

　こんな生活は良くないわ。
いえ、子作りも妻の大切な仕事だけど。

「ああ。義姉上の出産があったから、リビエラ伯爵家の家族は結婚式に来れなかっただろう？お披露目も兼ねていこうと思うんだが」

「嬉しいです！」

「じゃあ、準備があるから三日後出発にしよう。その旨、あちらにも知らせておくよ」

「ありがとうございます」

　ハデス様は朝食を終えると、私を抱き上げてご自分のお部屋へと向かわれた。

「ハデス様？」

「どうも寝所にいると、そういう気持ちになってしまう。いや、どこにいてもそういう気持ちにはなるんだけど・・・俺は何を言ってるんだ・・・」

「・・・ぷっ、クスクスクス」

　思わず吹き出してしまう。

　私もハデス様と抱き合うのは、嬉しい。とても幸せだと感じるから。

　立てないほどはちょっと困るけど。

「笑うなよ」

「だって。それで、お部屋に移りましたの？」

「ああ。三日後にローゼン王国に向かうなら、無理はさせられない。馬車とはいえ、移動距離が長いからな。それに、お土産も準備しないと」

　そうね。そろそろ夜着から着替えたいわ。

　どうして毎日毎日違う夜着・・・しかも表現し難いやつが出て来るのかしら。

　もしかして、新婚でなくなってもあれを着なきゃならないの？

「仕方ない。着替えて買い物に行こうか？」

「ええ。お姉様たちと可愛い甥っ子にお土産をたくさん買わなくちゃ」

　そう。
お姉様は半月前に、リビエラ伯爵家の後継である嫡男を出産された。

　さすがに、赤子を連れてのエレメンタル帝国までの旅は大変なので、改めて顔を見せに行くという話になっていたの。

　お父様だけでもという話はあったのだけど、ちょっと領地でゴタゴタがあって、お父様が来るにしても強行軍になるから、と見送りになったのよね。

　私も甥っ子に会いたいから、落ち着いたらローゼン王国に行くと伝えていたのだけど、まさか結婚式から一週間ほどで向かえるとは思わなかったわ。

　ふふっ。
もう帰る場所はエレメンタル帝国になって、ローゼン王国のリビエラ伯爵家は向かう場所になったんだわ。