上 下
198 / 215

ラムズベルト子爵令嬢②

しおりを挟む
「私、平民の恋人がいるのです」

 そう言われて・・・びっくりして固まってしまった。

 別に、平民の恋人がいるから悪いとは思わないわ。

 驚いたのは、罪を犯すほど皇妃の座にこだわっていたのに、シリカ様が平民の方と交際されていることを夫人が気付かなかったことよ。

 こう言ってはなんだけど、絶対に見張りとか付けていそうなのに。

「よく、気付かれませんでしたわね」

「そこには細心の注意をしました。母の言うことには絶対服従。全て母が正しいと、周囲にも私が心からそう思っていると思わせるような言動をしました。誰が母の手下なのか分からなかったからです」

「お味方は?」

「私の専属侍女のターナだけは信じられます。ターナは、私が彼と出会った時に一緒にいて・・・でも、それを黙っていてくれたんです。それ以来、彼と会う時はターナが協力してくれていて」

 私はそのターナさんという人の為人を知らないけど、シリカ様を裏切ることがないといいと思う。

「それで、その平民の彼と一緒になるには、侯爵令嬢という立場・・・いえ、母が状態では難しかったのです。私は成人したら家を捨てて、彼と駆け落ちするつもりでした」

「駆け落ちですか」

「今まで侯爵家の恩恵に与っていながら、と思われますよね。私も、母の日記を読むまではそう思って決断できませんでした。私はちゃんと話せば、母も父も認めてくれると思っていて、でもターナが絶対にバレないようにしなきゃ駄目だと言ってくれて」

 別に恩恵に与っていながらとは思わないわ。
 誰だって他人には分からない背景があるもの。

 私だって、お父様お母様お姉様に我儘を言って、マクラーレン王国に逃げたわ。

 私は家族が絶対的な味方だと信じていたから家族に伝えたけど、少しでも不信感があれば言わずに逃げていたと思う。

「母は・・・異常です。母、いえあの人は、子供を王族の婚約者にするために・・・生まれてきた嫡男を、私のお兄様を殺しているんです」

「!」

「日記に・・・男の子では意味がない、と。そしてこの子がいれば、王族をラムズベルト侯爵家に婿入りさせることが出来ない、と。兄が生まれた年はサリュ殿下と同じ年です。すぐに子を授かっても第一皇子殿下とは三歳以上歳が離れてしまう。母は、子が出来にくかったらしく、当初は第一皇子殿下との婚約を目指して子を産むつもりだったみたいです。実際、私を授かったのも予定より三年遅れましたし」

 子供を・・・殺しているの?
自身がお腹を痛めて産んだ子を?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生悪役令嬢の考察。

saito
恋愛
転生悪役令嬢とは何なのかを考える転生悪役令嬢。 ご感想頂けるととても励みになります。

隣の芝は青く見える、というけれど

瀬織董李
恋愛
よくある婚約破棄物。 王立学園の卒業パーティーで、突然婚約破棄を宣言されたカルラ。 婚約者の腕にぶらさがっているのは異母妹のルーチェだった。 意気揚々と破棄を告げる婚約者だったが、彼は気付いていなかった。この騒ぎが仕組まれていたことに…… 途中から視点が変わります。 モノローグ多め。スカッと……できるかなぁ?(汗) 9/17 HOTランキング5位に入りました。目を疑いましたw ありがとうございます(ぺこり) 9/23完結です。ありがとうございました

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

美春と亜樹

巴月のん
恋愛
付き合っていた二人の攻防による復縁話 美春は先輩である亜樹と付き合っていたが、度重なる浮気に限界を感じて別れた。 しかし、別れてから積極的になった彼に対して複雑な思いを抱く。 なろうにも出していた話を少し修正したものです。

婚約破棄!? ならわかっているよね?

Giovenassi
恋愛
突然の理不尽な婚約破棄などゆるされるわけがないっ!

処理中です...