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サングリア子爵家
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ラムズベルト子爵に下された処罰に、サングリア子爵夫妻は戸惑った表情だった。
皇妃様の昔の一件は公表されていないから、そこまでの処罰になったことに驚いているのだと思う。
「さて、サングリア子爵夫妻。ひとつ聞きたい。もしご息女とサリュの婚約が撤回された場合、ご息女の婚約はどうするつもりだ?」
「・・・娘に、メリッサに罪はありません。もしも、サリュ殿下との婚約解消が原因で新たな婚約が出来ないというのなら、我々は領地を王家にお返し、平民となります。田舎に行けば、貴族と顔を合わせることもないでしょうし」
「それでも娘がこの帝国で生き辛いなら、他国へ移住いたします」
「そうか。まぁ、サリュはご息女に惚れているようなのでな、そのようなことにはならんと思うが。子爵たちの気持ちを聞けてホッとした。では、サングリア子爵。サリュが臣籍降下することを踏まえ、伯爵へと陞爵する。かつ、ラムズベルトからの没収した領地の管理を任せる」
「え、あ、はっ!謹んで拝命いたします」
元々エレメンタル帝国では、本人の資質を重要視していて、その背景にある家格に対しては重きを置かないそう。
もちろん、家格が低ければそれなりにさまざまな問題もあるらしいけど、陛下は平民でも優秀な人は重用されるし、能力のない人は例え公爵家の人間でも重要なポジションには付かせないそう。
ハデス様が伯爵の地位を賜ったのも、他国で元々が公爵令息だったということよりも、本人の能力を陛下が買ってくださったかららしいわ。
サリュ殿下は元々爵位に執着がなく、サングリア様個人に惹かれて、子爵家への婿入りを決められたらしい。
そのサングリア様個人への愛情を、ラムズベルト侯爵夫人につけ込まれたのね。
まぁ、今回のことに懲りて、次からはちゃんと言葉で確認し合うと思うわ。
私も、ちゃんとハデス様と言葉を交わさなきゃ。
「サングリア伯爵夫妻も、事が収まるまでは王宮に滞在するように。そろそろ話し合いも終わっただろう。サリュとサングリア伯爵令嬢をここへ」
陛下は、もしものことが起きることをとても警戒されている。
そうよね。
もし、ご両親に何かあればサングリア様はとても傷付かれるもの。
「「メリッサ」」
「お父様、お母様」
サリュ殿下とご一緒に部屋に入って来られたサングリア様は、ご両親に抱きしめられた。
ちなみにサリュ殿下は、陛下に拳骨をいただいていた。あらら。
「殿下とちゃんとお話できたのかい?」
「はい。私も、ちゃんとサリュ様にお聞きすれば良かったのです。でも、もう大丈夫です。今度からはなんでもお話するとお約束しましたから」
「すまない、サングリア子爵。二度とこんなことを起こさないと誓う」
「メリッサを想って下さってのことですから。ですが、次はないようにお願いしますよ」
サリュ殿下の謝罪を受け入れて、サングリア伯爵ご夫妻はホッとしたように微笑まれた。
私もホッとしたわ。
こじれなくて良かった。
皇妃様の昔の一件は公表されていないから、そこまでの処罰になったことに驚いているのだと思う。
「さて、サングリア子爵夫妻。ひとつ聞きたい。もしご息女とサリュの婚約が撤回された場合、ご息女の婚約はどうするつもりだ?」
「・・・娘に、メリッサに罪はありません。もしも、サリュ殿下との婚約解消が原因で新たな婚約が出来ないというのなら、我々は領地を王家にお返し、平民となります。田舎に行けば、貴族と顔を合わせることもないでしょうし」
「それでも娘がこの帝国で生き辛いなら、他国へ移住いたします」
「そうか。まぁ、サリュはご息女に惚れているようなのでな、そのようなことにはならんと思うが。子爵たちの気持ちを聞けてホッとした。では、サングリア子爵。サリュが臣籍降下することを踏まえ、伯爵へと陞爵する。かつ、ラムズベルトからの没収した領地の管理を任せる」
「え、あ、はっ!謹んで拝命いたします」
元々エレメンタル帝国では、本人の資質を重要視していて、その背景にある家格に対しては重きを置かないそう。
もちろん、家格が低ければそれなりにさまざまな問題もあるらしいけど、陛下は平民でも優秀な人は重用されるし、能力のない人は例え公爵家の人間でも重要なポジションには付かせないそう。
ハデス様が伯爵の地位を賜ったのも、他国で元々が公爵令息だったということよりも、本人の能力を陛下が買ってくださったかららしいわ。
サリュ殿下は元々爵位に執着がなく、サングリア様個人に惹かれて、子爵家への婿入りを決められたらしい。
そのサングリア様個人への愛情を、ラムズベルト侯爵夫人につけ込まれたのね。
まぁ、今回のことに懲りて、次からはちゃんと言葉で確認し合うと思うわ。
私も、ちゃんとハデス様と言葉を交わさなきゃ。
「サングリア伯爵夫妻も、事が収まるまでは王宮に滞在するように。そろそろ話し合いも終わっただろう。サリュとサングリア伯爵令嬢をここへ」
陛下は、もしものことが起きることをとても警戒されている。
そうよね。
もし、ご両親に何かあればサングリア様はとても傷付かれるもの。
「「メリッサ」」
「お父様、お母様」
サリュ殿下とご一緒に部屋に入って来られたサングリア様は、ご両親に抱きしめられた。
ちなみにサリュ殿下は、陛下に拳骨をいただいていた。あらら。
「殿下とちゃんとお話できたのかい?」
「はい。私も、ちゃんとサリュ様にお聞きすれば良かったのです。でも、もう大丈夫です。今度からはなんでもお話するとお約束しましたから」
「すまない、サングリア子爵。二度とこんなことを起こさないと誓う」
「メリッサを想って下さってのことですから。ですが、次はないようにお願いしますよ」
サリュ殿下の謝罪を受け入れて、サングリア伯爵ご夫妻はホッとしたように微笑まれた。
私もホッとしたわ。
こじれなくて良かった。
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