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オルコット男爵令息

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 オルコット男爵令息らしき人が、サリュ殿下と話していた?

 エレメンタル帝国の貴族に、焦茶色の髪の人間は少なくない。

 下位貴族になるほど、同じような髪色になるようで、逆に高位貴族の子息令嬢は目立つ色合いが多い。

 だから、それがオルコット男爵令息とは限らない。

 でも下位の貴族の令息の中で、王族である殿下と話す可能性があるのはオルコット男爵令息だわ。

 もちろん、他にご友人がいないとは言い切れないけど。

 あの皇帝陛下のお子様だもの。
身分でご友人を決めるとは思えないし。

「レオが・・・」

「サングリア様、オルコット男爵令息とは限りません。わたくしはお顔を拝見していませんから」

「いえ・・・自分の幼馴染ですから悪く言いたくないのですが、彼ならあり得るかもしれません。お断りする時に、もし婚約したとしても子爵には私がなり、レオに爵位は継がせないと言ったら激昂して婚約の話は流れたのです」

「そういえば先ほど、サングリア様に上から目線でものを言うご子息だと、おっしゃっておられましたわね。そう・・・そういう方ですのね」

 私は王太子殿下の婚約者時代に、その権力に擦り寄ろうとする人間や、私を蹴落とそうとする人間を多く見てきた。

 だから申し訳ないけど、そのオルコット男爵令息のことを信用できない。

「サングリア様。この件は、ハデス様にお話して動いてもらいます。ですから、決してサングリア様がオルコット男爵令息と接触したりしないでください。そういう人間は・・・を選びがちですから」

「最悪の行動、ですか?」

「閨を共にしてしまえば、王家には嫁げませんわ」

 エリーナ様の言葉に、サングリア様はまさかというお顔をなさるけど、あり得ないことではないと思うわ。

 私たちは女で、どうやっても力では男の人には敵わない。

 子爵の地位にこだわっているのなら、最悪その選択をしかねないもの。

 だから、サングリア様にはオルコット男爵令息に詰め寄ったりしないで欲しいのよ。

 それに、サングリア様が話さなければならないのは、彼ではなくサリュ殿下だわ。

「サングリア様は、サリュ殿下とちゃんと話し合ってください。エリーナ様。セイン殿下にご協力いただいて、サングリア様とサリュ殿下を王宮でしばらくおいてもらってくださいませ」

「ふふっ。分かりましたわ。これでセイン様の憂いが晴れるなら喜んで協力いたしますわ」

「サングリア子爵ご夫妻には、私がお話しておきます。サングリア様、サリュ殿下をのなら、どれだけ話し合ってください。でないと、後悔しますわ」

「・・・わかりました」

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