上 下
179 / 215

新たな縁

しおりを挟む
 私の言葉に、サングリア子爵令嬢様は考え込んでいるようだった。

 そうよね。
初対面の相手にこんなことを言われても、戸惑うわよね。

 そんな中、私の言葉を同じように聞かれていたエリーナ・ルコット公爵令嬢様が口を開いた。

「セイン様からお聞きしたのですが、ハデス様・・・失礼しました、ヴェルセット様でしたわね、彼と婚約されたのは、マクラーレン王国の王太子殿下からの婚約打診を避けるためとは本当なのですか?」

 あら、ご存知だったのね。
ハデス様は皇帝陛下のご友人だけど、そんなことをお話するくらいには、長男のセイン殿下と気が合うのかしら。

「ご存知でしたか。正確に言うと、元王太子殿下がご自身の婚約者の友人という位置に私を置くために、従兄弟の公爵令息様との婚約を打診して来られたのです。私の姉とハデス様はご友人でしたので、私に救いの手を差し述べて下さいましたの。共に過ごしうちに・・・私はハデス様に惹かれていったのですわ」

 そう考えれば、あの王太子殿下の暴走も私の人生には意味があったものだったのだわ。

 ウィングバード公爵閣下とお話できたことで、私は真っ直ぐに立てる力をいただけた。

 こんなふうに・・・

 人と人との縁が、生きる道筋を変えて行く。良い方向も。悪い方向にも。

「申し訳ございません。決して、リビエラ様に悪意を向けようと思っての発言ではないのです。ヴェルセット様は平民になるおつもりだったのでしょう?それを知っていてもヴェルセット様を選んだ理由を知れば、メリッサ・サングリア様が素直になられると思ったのです」

「ルコット様は、サングリア様のことを大切に思ってらっしゃるのですね」

「どうかエリーナとお呼びください。わたくしは心から、婚約者であるセイン様のことをお慕いしております。そのセイン様が弟であるサリュ殿下とサングリア様のことをとても心配されているのです。わたくしに出来ることなら何でもしたいと考えています。ですが、たとえセイン殿下が望んだとしても、サングリア様のお気持ちを無視したことをしたくはありません。ですから、そのお心を開いて欲しくて。ですが申し訳ございません。リビエラ様に失礼なことを申し上げました」

 気にしなくて良いのに。
全然失礼じゃないわ。

 だって事実だもの。
事実だからこそ、ハデス様も皇帝陛下もセイン殿下に話したのだと思うわ。

「どうか私のことも、ジュエルとお呼びください。私は伯爵令嬢ですし、身分はエリーナ様の方が上なのですから」

 このままいけば、エリーナ様は皇太子妃。未来の皇妃様だもの。

 伯爵夫人になったとしても、私は臣下だわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生悪役令嬢の考察。

saito
恋愛
転生悪役令嬢とは何なのかを考える転生悪役令嬢。 ご感想頂けるととても励みになります。

隣の芝は青く見える、というけれど

瀬織董李
恋愛
よくある婚約破棄物。 王立学園の卒業パーティーで、突然婚約破棄を宣言されたカルラ。 婚約者の腕にぶらさがっているのは異母妹のルーチェだった。 意気揚々と破棄を告げる婚約者だったが、彼は気付いていなかった。この騒ぎが仕組まれていたことに…… 途中から視点が変わります。 モノローグ多め。スカッと……できるかなぁ?(汗) 9/17 HOTランキング5位に入りました。目を疑いましたw ありがとうございます(ぺこり) 9/23完結です。ありがとうございました

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

美春と亜樹

巴月のん
恋愛
付き合っていた二人の攻防による復縁話 美春は先輩である亜樹と付き合っていたが、度重なる浮気に限界を感じて別れた。 しかし、別れてから積極的になった彼に対して複雑な思いを抱く。 なろうにも出していた話を少し修正したものです。

婚約破棄!? ならわかっているよね?

Giovenassi
恋愛
突然の理不尽な婚約破棄などゆるされるわけがないっ!

処理中です...