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皇帝陛下の策略

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 あの後、私とハデス様は皇城の居住区にある内庭でお茶をいただいていた。

 いくら婚約者だといっても、まだ未婚の男女が部屋で二人きりになるのはよろしくない。

 部屋の隅に侍女を同席させるか、もしくは部屋の扉を開けて、外に騎士や侍女を待機させるか。

 でもどうしても室内だと話が聞こえてしまうかもしれないから、侍女たちに聞かれたくない話の時は庭を使うことにしている。

 庭なら、声が届かない場所で待機していてもらえるもの。

 まぁ、もしかしたら隠密の方がいて聞かれているかもしれないけど。

「皇帝陛下は、どう決断されるでしょうか」

「俺の・・・予測でもかまわないか?」

 ハデス様が少し考えた後、そう尋ねて来られたので、頷く。

「陛下は多分、今回は注意だけで終わらせると思う。侯爵夫人はともかく、侯爵が抵抗するだろうからだ。だから、今回注意と警告で終わらせ、次回に絶対に擁護できない罪を犯させると思う」

 絶対に擁護できない罪。
それを、ロロナ様が犯すと?

 いえ。確かにあの自分のしていることが正しいと思い込んでいるロロナ様なら、やらかすのかもしれないわね。

 でも、そこまで無理に追い込む必要があるの?

 今回のことで罪に問えば良いのではないの?

「今回のことで、罪に問うことができないのですか?」

「いや。立ち入り禁止の場所に入り、騒動を起こした罪には問えるが、重い罪に問えない。陛下は多分・・・生涯幽閉か毒杯という罪に問うつもりだ。おそらく、擁護した侯爵と前侯爵夫妻も罪に問う気だ。侯爵夫人、つまり皇妃様の妹をラディシュ侯爵と離縁させるつもりなのだと思う」

 姪がそのような罪に問われれば、皇妃様の醜聞になる。

 病死と発表するのかもしれない。
となると、もちろん事情を知る侯爵家の人間を罪人として労働施設に送るか幽閉するかになるわよね。

 そのためにも、侯爵夫人は離縁させておくということね。

 仕方ないわ。
侯爵家の方々が甘やかさなければ、ロロナ様だってああはならなかったのでしょうし。

 ロロナ様が反省する可能性があるなら、陛下もそこまでの罪に問おうとしないと思うから。

 そもそも、罰として他国の伯爵家に嫁がされたということを理解していなかったのよね。

 理解していても、自分は悪くないと思っていたとか?

「理解しましたわ。それではもうしばらくは警戒しておくべきですわね」

「ああ。陛下の判断にもよるが、おそらく・・・もちろん、必ず守る」

「ええ。信用しておりますわ。それにハンナもいてくれますから」

 出来ることなら、反省してくれれば良いけど。きっと、無理なのでしょうね。
 
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