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ウェルズ公爵家①

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「さて、少しリビエラ嬢と話がある。ウェルズ公爵令息は退出して待っていてくれ」

 国王陛下が私とウェルズ様の婚約を認めた後、ウェルズ様・・・ハデス様に退出を促した。

「・・・」

「リビエラ嬢の元婚約者のことで話しておきたいことがある」

「かしこまりました」

 ハデス様が退出され、私と陛下、陛下の護衛兼側近の方のみになった。

「ウェルズならリビエラ嬢に問いただしたりはしないだろうが、もし尋ねられたら、シリウスの現在の様子についてだと言えばいい。現在シリウスは、半日は薬によって眠った状態だ。というのも感情の起伏が激しく、暴れるのでな。他人に怪我をさせる心配はないが、本人が怪我をする可能性がある。治療のためとはいえ塔から出すわけにはいかん。このままの状態が続けば、薬により眠ったきりになるやもしれん。その旨、知っておいて欲しい」

 陛下のお言葉に、頷くことしか出来なかった。

 かつて、王太子として国のために努力を怠らなかったシリウス殿下。

 お優しくて、努力家で、心から尊敬できる大切な存在だった。

 婚約者がいながら、他の令嬢に触れたことに耐えられなくて、婚約の解消を求めたけど、シリウス殿下が不幸になればいいなんて考えたわけじゃなかった。

 私に対して妙な言い訳と執着さえしなければ、臣下としてちゃんとお支えする予定だったのに。

 それでも・・・
もう私は殿下をお支えすることは出来ない。

 父親である国王陛下が、血涙を心で流しながらも決断した王としての決定に、異議も不満も述べるつもりはない。

「かしこまりました」

「そして、本題はこっちなのだが、ウェルズ公爵家のことだ」

 どうやら陛下は、ハデス様のご実家であるウェルズ公爵家についてお話があるようだ。

 その話をするためにハデス様を退出させ、聞かせたくないシリウス殿下の現在を私にしたのだろう。

「ウェルズ現公爵と夫人が、嫡男でなく次男を溺愛していることは知っているな?」

「はい。ハデス様からお伺いしました」

「嫡男であるハデスの五歳年下、つまりはリビエラ嬢の二歳年下となる。まだ学園に入学していないので、本人の資質がどの程度かは分からん。それに、どれだけ学問の部分で優秀でも・・・我が息子のような行動を起こすようなら公爵家の後継には許容出来ん。これから学園を卒業するまで、様子見となる」

 ハデス様の廃籍が保留状態なのは、そのせいだと陛下はおっしゃられた。

 確かに、二人いる息子のうち片方を廃籍したら、もし残った方が問題を起こせば養子を取るしかなくなる。

 次男の方を溺愛しているなら、ご両親が養子を取っても円満にとはいかないかもしれないわね。
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