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婚約者候補
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「え?」
今、婚約者って聞こえたのだけど・・・気のせいかしら?
お父様とお母様、お姉様にお兄様が勢揃いした居間で、私はこてりと首を傾げた。
「聞き間違えでしょうか?婚約者って聞こえましたが」
「聞き間違えではない。ハデス・ウェルズ卿と婚約することが、エレメンタル帝国に行く条件だ」
やっぱり聞き間違えではなかったわ。
え。どうして婚約だなんて話になったの?
「ジュエル。他国に行きたいのなら、お前をちゃんと守ってくれる存在が必要だ。マクラーレン王国の時はフレグランスとルークがいたし、トライデント公爵家もいてくれた。だからあの王太子殿下の暴走も避け切ることが出来たんだ」
「あのね、ジュエル。旦那様も私も、本当は貴女にこんなことを言いたくはないの。でもね、貴女は王太子妃教育を終えた未婚の貴族令嬢なの。マクラーレン王国の王太子殿下のように貴女を利用しようとする人間は必ずいるわ。私たちの目の届く範囲なら守ってあげられるけど、遠く離れた他国に行くとなるとそうはいかないの。貴女を守ってくれる存在が必要なのよ」
お父様やお母様の言っていることは理解できた。
でも私の事情で、ウェルズ様に迷惑はかけられないわ。
「よくわかりました。でも、私の事情でウェルズ様にご迷惑はかけられません」
「そこは大丈夫。ウェルズには、婚約者のふりをする対価をちゃんと払うと交渉してあるから」
「対価、ですか?」
「ああ。アイツが公爵家から廃籍して、平民になろうとしている話は聞いているよね?この先生きていく上でお金はいくらあっても困らないからね。それに、アイツに何か望みが出来た時、出来る限り聞くという約束もしてある」
そういえばウェルズ様は、お姉様たちの結婚式が終わったら国王陛下に廃籍をお願いするとおっしゃってたわ。
「廃籍はされたのですか?」
「ウェルズ公爵家には、ハデスが廃籍を望んだので、それを受け入れたと伝えたそうだよ。ただ、実際の廃籍は弟が成人してから、ということらしい」
ご両親が弟さんを溺愛していると、ウェルズ様はおっしゃっていた。
確か五歳年下だったわね。
その方は、ウェルズ様のことをどうお考えなのかしら?
ウェルズ様は、エレメンタル帝国で暮らす方が自由でいいとおっしゃっていたけど。
それはそうよね。
ずっと弟さんばかり溺愛して、ウェルズ様を邪魔扱いしていた両親のもとで暮らすのはきっと辛かったわよね。
私は家族にも使用人にも恵まれているから、ウェルズ様のお気持ちを本当の意味で理解はできないけれど。
ウェルズ様が、私の婚約者のふりを納得して受け入れてくださっているのなら、お願いしてもいいのかしら?
今、婚約者って聞こえたのだけど・・・気のせいかしら?
お父様とお母様、お姉様にお兄様が勢揃いした居間で、私はこてりと首を傾げた。
「聞き間違えでしょうか?婚約者って聞こえましたが」
「聞き間違えではない。ハデス・ウェルズ卿と婚約することが、エレメンタル帝国に行く条件だ」
やっぱり聞き間違えではなかったわ。
え。どうして婚約だなんて話になったの?
「ジュエル。他国に行きたいのなら、お前をちゃんと守ってくれる存在が必要だ。マクラーレン王国の時はフレグランスとルークがいたし、トライデント公爵家もいてくれた。だからあの王太子殿下の暴走も避け切ることが出来たんだ」
「あのね、ジュエル。旦那様も私も、本当は貴女にこんなことを言いたくはないの。でもね、貴女は王太子妃教育を終えた未婚の貴族令嬢なの。マクラーレン王国の王太子殿下のように貴女を利用しようとする人間は必ずいるわ。私たちの目の届く範囲なら守ってあげられるけど、遠く離れた他国に行くとなるとそうはいかないの。貴女を守ってくれる存在が必要なのよ」
お父様やお母様の言っていることは理解できた。
でも私の事情で、ウェルズ様に迷惑はかけられないわ。
「よくわかりました。でも、私の事情でウェルズ様にご迷惑はかけられません」
「そこは大丈夫。ウェルズには、婚約者のふりをする対価をちゃんと払うと交渉してあるから」
「対価、ですか?」
「ああ。アイツが公爵家から廃籍して、平民になろうとしている話は聞いているよね?この先生きていく上でお金はいくらあっても困らないからね。それに、アイツに何か望みが出来た時、出来る限り聞くという約束もしてある」
そういえばウェルズ様は、お姉様たちの結婚式が終わったら国王陛下に廃籍をお願いするとおっしゃってたわ。
「廃籍はされたのですか?」
「ウェルズ公爵家には、ハデスが廃籍を望んだので、それを受け入れたと伝えたそうだよ。ただ、実際の廃籍は弟が成人してから、ということらしい」
ご両親が弟さんを溺愛していると、ウェルズ様はおっしゃっていた。
確か五歳年下だったわね。
その方は、ウェルズ様のことをどうお考えなのかしら?
ウェルズ様は、エレメンタル帝国で暮らす方が自由でいいとおっしゃっていたけど。
それはそうよね。
ずっと弟さんばかり溺愛して、ウェルズ様を邪魔扱いしていた両親のもとで暮らすのはきっと辛かったわよね。
私は家族にも使用人にも恵まれているから、ウェルズ様のお気持ちを本当の意味で理解はできないけれど。
ウェルズ様が、私の婚約者のふりを納得して受け入れてくださっているのなら、お願いしてもいいのかしら?
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