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その時までは〜国王視点〜

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「お前たちがそんなに愚かだとは思わなかった。いや、私が甘かったということか」

 は騎士たちが拘束した上で、猿轡も噛ませている。

 弁明も何も聞きたくはないからだ。

 どうせ、口を開いても言うことは分かっている。

「自分は悪くない」

 私は自分の妻と息子を、冷ややかな気持ちで眺めた。

「何を考えていたのか、何を思っていたのか、そんな弁明は必要ない。お前たちのしたことは、決して許されることではない。二人とも北の塔に生涯幽閉だ」

 絶望したような、だが理解が追いついていないような表情の妻と息子から視線を外し、衛兵たちにすぐにを塔へと連行させる。

「うゔーっ!ゔーっ!」

 何かを叫んではいるが、猿轡のおかげでそれは言葉として私には届かない。

 二人の姿がなくなると、私は疲れたように椅子へと凭れた。

 扉の陰から、リビエラ伯爵が姿を見せる。

「一年くらいでしょうか」

 彼の言葉に頷く。

「まずは病床についたため、コンフォート公爵家への婿入りは先送りだと公表する。一年後に毒杯を与える。王妃はその後に、息子の訃報にショックで倒れて息を引き取ったことにする」

「無難な落とし所でしょう」

「すまない、伯爵。本当なら斬首したいところだろうが」

「せっかく美談にして終わらせたのです。処刑などしたら、台無しになってしまいますからね。かまいませんよ」

 確かに処刑などすれば、シリウスとコンフォート公爵令嬢との真実の愛のために、ジュエル嬢が身を引いたという美談が台無しになってしまう。

 この先、ジュエル嬢がこの国の貴族にしろ、他国の貴族にしろ、嫁ぐにあたって余計な勘ぐりをされることは避けたい。

「それでコンフォート公爵家の方は、どうなさるのですか?」

「娘はシリウスの婚約者だ。といえど婚約解消などさせん。そして、その後二年は喪に服してもらう。三年後には王太子サリオンの婚姻の儀がある。喪が明けたあとは修道院だ。平民にと言うのなら止めないつもりだ。王太子と恋仲になり、公爵家へ婿入りしてもらうことが決まっていたが、婚約者の病気により婚約がなくなる。それだけなら美談だろう。だが、後継でありながら貴族でなくなるということは、と疑われるだろう。少なくとも貴族には娘が純潔でないことは勘付かれる。平民に戻って逞しく生きるというのなら、それはそれでいい。シリウスが愚かだったというだけのことだ。公爵家には、ことは許可しないと伝えている。娘に婿が取れなければ、今代で公爵家は終わりだ」

 元コンフォート公爵夫人の実家を陞爵してもいい。
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