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自分で思うよりも

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 お姉様の結婚式も目前になった。

 マクラーレン王国の王太子殿下にルイス様、ルージュ様から謝罪のお手紙が届いたけど、お返事はしていない。

 帰国の際に、謝罪してくるだろうが放置するようにとあちらの国王陛下の命を受けていたから。

 伯爵令嬢が、王族や公爵令息令嬢を無視するなんて許されないことだけど、国王陛下のお言葉に逆らうつもりはない。

 いつか・・・
またお会いできたらその時にはお詫びしようと思う。

 と言う話を、ついウェルズ様にしてしまった。

 あのお会いした日から、ウェルズ様は時々リビエラ伯爵家に遊びに来てくださるようになった。

 未婚の女性をホテルに呼ぶなんて失礼だったと、謝罪して下さった。

 エレメンタル帝国産の宝石も、お持ちくださった。

 不思議と、ウェルズ様に対して身分とか引け目とかを感じない。

 ずっと、公爵家の庇護下から外れて暮らしていらっしゃるせいかもしれない。

 私が引け目を感じていないことに、お姉様が一番驚かれていた。

「ジュエルは、ウェルズ様と話してると楽しそうね」

「はい。ウェルズ様はとてもお話がお上手なので、楽しいです。エレメンタル帝国のこともたくさんお話してくださって」

「・・・良かったわ。楽しいのなら」

 楽しくて、私は忘れていたんだと思う。

「ジュエル!」

 ウェルズ様にお願い事をしに、滞在されているホテルに出向いた私は、ロビーで突然その腕を取られた。

「!」

 振り向いた私は、そこにいる人の姿に固まった。

「どう・・・して」

「ジュエル、僕は君をずっと愛しているのに、何故婚約解消なんてっ!」

 どうして、こんなところにシリウス様がいるの?

 王宮内で軟禁されているって、陛下からお聞きしたのに。

 それに、何故ですって?

 私は、私を守るように立つ護衛の横からシリウス様に向き合った。
 
「今、何故とおっしゃいましたか?婚約者がいながら、他の女性の頬に口づけをし、愛を囁き、陛下にお伺いしたところもなさっていたとか。ローゼン王国では、不貞が決して許されないことであることを、まさか王族であった方がご存知ないのですか?私は、それほどまでにお好きな方がいるのならと、身を引きましたの。真実の愛ですものね?」

 陛下もお父様たちも、シリウス様が平民になって生きていけないことを理解していて、だからこそという形で公爵家に婿入りという落とし所にしたというのに。

 この方、こんな人目のあるところで!

 そもそも、監禁されてたのじゃないの?


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