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愚か者〜ルーク視点〜

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「ふっ、ふふふふふっ」

「ほほほっ、ほほほほっ」

 母と、未来の妻の笑みに、我が事ではないのに背筋に冷や汗が流れた。

 このままだと、確実に大惨事になる。

 未来の妻であるフレグランスの妹、ジュエル嬢の護衛に、伯爵家の双子であるリラとララを付けた。

 あの双子は、親ですら見分けがつかない自分達を見分けてくれたジュエル嬢に傾倒している。

 その二人から、最近学園で、ジュエル嬢を蔑む輩がいると報告があった。

 我がトライデント公爵家、ジュエル嬢の友人である未来の王太子妃(確定)であるルージュ嬢のラウンディ公爵家、そして王弟殿下のウィングバード公爵家。

 この三家が大切にしているジュエル嬢に牙を剥く?

 この国の貴族は、そこまで阿呆だったか?

 僕は次男であることと、フレグランスに惚れ込んだことから、結婚後はフレグランスの実家リビエラ伯爵家に婿入りする。

 だが、両親や友人、そして尊敬する兄が継ぐトライデント公爵家があるマクラーレン王国がどうなっても良いとは思っていない。

 国王陛下も王妃殿下も素晴らしい人だし、次代の王太子殿下も・・・まぁルージュ嬢さえ関わらなければ優秀な方だ。

 男爵令嬢が、侯爵令息と親しくしていたり、王弟殿下ご子息のルイス殿にまとわりついたりしていたことで、一ヶ月の謹慎になった。

 その際に、王太子殿下や公爵令息に近づくなと制約を出した。

 確かに近づいてはいないらしい。

 だが、代わり?にというか、何故かジュエル嬢のを吹聴しているそうだ。

 明確にジュエル嬢の名を出すのではなく、彼女が犯人だと周囲に勘違いさせるやり方だと聞いた。

 それを、男爵令嬢周囲の下位の貴族の一部が誤解して信用するのなら、ギリギリ理解できる。

 あくまでもギリギリだが。
下位の貴族の中には、伯爵家で他国の令嬢であるジュエル嬢が高位貴族や王族と親しいことを羨む挙句に嫉妬する人間もいるだろうから。

 だがその嘘を、高位貴族の伯爵家や侯爵家の人間が信用してジュエル嬢を蔑んでいる?

 しかも、教師の中にもジュエル嬢に注意した者がいる?

 阿呆か。

 あくまでも親は知らないのだと思いたいが、次代を継ぐ子供達がそんなでは、確実に三大公爵家と王家からは距離を置かれるぞ?

 家を潰したいのか?

 どんな噂であれ、裏付けも取らずにそんな噂を信用すれば、痛いしっぺ返しが来ることに気付かないのか?

 ジュエル嬢は確かに伯爵令嬢だが、王太子妃教育を終えた才女で、公爵家の親戚になるし、公爵令嬢の友人だぞ?

 愚かな言動をすればどうなるのか、男爵令嬢の件で学ばなかったのか?

 仕方ない。
やったことの責任は取るべきだ。
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