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親衛隊

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「そこで何をしているのですか!」

 厳しい叱咤の声に、私もリエナイ男爵令嬢も振り返った。

 そこには、生徒指導の先生の姿があった。

「あ、あの・・・私、リビエラ様に呼び出されてっ!」

「・・・そう。それで?」

「私、以前からリビエラ様に酷いこと言われてて。それでっ・・・」

 先生が優しく応えてくれたことで、リエナイ様は私を悪者にすることにしたようだ。

 この先生はキツい指導で有名だとルージュ様から伺ってたけど、お優しい方に見えるわ。

 もちろん、リエナイ様の言葉は否定させていただくけど、先生がリエナイ様の言葉を信用されたら面倒ね。

 ご不浄に行くからと、一人で来るのじゃなかったわ。

 リエナイ様が、両手で顔を覆って・・・ねぇ、指の隙間から不遜な顔が丸見えだけど。

 演技するなら、涙くらい流して見せたら?

「よく分かりました。ドロシー・リエナイ男爵令嬢、ちょっと来なさい」

「・・・ふぇ?」

「学園長室まで行きましょう。学園長に同じことを話しなさい」

「へ・・・?学園長?」

 リエナイ男爵令嬢は、多分だけどこの場で私を叱責してくれると思っていたんじゃないかしら。

 もしそうだとしても、私の意見も聞かずに叱責はしないと思うわよ?

 私が否定した場合、ちゃんと私が呼び出したという証拠を掲示するか、酷いことを言っていたという証人が必要よ。

「え、あ、え?あの、この場で叱・・・注意していただけたら・・・」

「ちゃんとお互いの言い分と、あと証拠も揃えてからでないとそんなことは出来ませんよ。さぁ、行きましょうか」

「え、えと、あの、だ、大丈夫です。その、今後注意していただければっ!しっ、失礼します!」

 リエナイ男爵令嬢は、早口でそう言うと、走るように逃げて行った。

 なんとも言えない気持ちで、その後ろ姿を見送る。

「「・・・」」

 厳しい視線を向けていた先生が、ふぅとため息を吐く。

「先生・・・」

「大丈夫でしたか?なるべく一人にならない方が良いですよ」

「先生は、私を信じてくださるんですか?」

 リエナイ男爵令嬢の狂言だと理解ってる?

 生徒指導の先生は、ふふっと微笑まれる。

 キツくまとめた髪に、眼鏡をかけた先生は女史と呼ぶに相応しい雰囲気だけど、笑顔はとても可愛らしかった。

「学園長からも、ジュエルさんを必ず守るようにと仰せつかっています。実は私たちは、ジュエルさんのお姉様であるフレグランス様の親衛隊なのです。学園の女性教師の七割は親衛隊員、残り三割が王家の関係者です。ですから、何かあればすぐに対処いたします」

 え、ええと。
教師の七割って・・・お姉様。一体親衛隊は何人いるんですか?
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