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王太子殿下がちょっと、その

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「僕の愛しのルージュに絡んだ娼婦がいるって?」

 私は、マクラーレン王国の王太子殿下のお顔は存じ上げている。

 シリウス殿下の婚約者時代に、一度お会いしたことがあるからだ。

 だけど形式的な挨拶をしただけだから、単に顔を知っているに過ぎない。

 だから・・・

 目の前の光景に、ちょっと戸惑ってしまう。

 べったりとラウンディ様に抱きつき、甘いんだか甘くないんだか分からない発言をされている方。

 お会いした時より、その黒髪は少し伸びていて、その黒い瞳は鋭さを増しているけれど、間違いなく目の前の方は、マクラーレン王国王太子殿下ダニエル・マクラーレン様。

 ええと。
あのリエナイ男爵令嬢様は、何をどう見て殿なんて思ったの?

 二人が婚約者だと知らない子供が見ても、どう見ても王太子殿下はラウンディ様にゾッコンなのだけど。

 不思議な気持ちになりながら、殿下や大公子息様たちを眺める。

 大公様のご子息ルイス・ウイングバード様は、ため息を吐きながら王太子殿下の腕をポンポンと叩いた。

「学園内ではやめてやれよ。ラウンディ嬢がものすごく嫌そうな顔をしてるぞ」

「ルージュ、嫌なの?」

「い、嫌ではありませんわ。ただ、その恥ずかしいので人前では控えていただけると、その嬉しいですわ」

 ラウンディ様の頬が赤くなっている。

 どうしよう。とても可愛い。
なんだか、とても素敵なものを見せてもらった気持ちになるわ。

「良かった。嫌じゃないんだね?嫌だと言われたら、ルージュを監禁しちゃいそうだったからね。しかし、二人きりだと僕の制御が効くかな・・・」

「・・・怖いことをブツブツいうのはやめろ。リビエラ嬢が困っている」

「うん?ああ。ジュエル・リビエラ嬢、災難だったね。変なのに絡まれたみたいで。これから何かあれば、ルイスに言えばいいよ。僕でもいいけど、学年が違うからね。ルイスに言えば、僕にまで話は届くから」

「お気遣い、ありがとうございます。でも、私は結構タフですから大丈夫です」

 王太子殿下は、ラウンディ様を巻き込んだこと、怒ってらっしゃるのかも。

 ものすごく溺愛なさっているみたいだし、身分的にも私にラウンディ様のそばにいて欲しくないのかもしれないわ。

「ほらみろ。お前がラウンディ嬢に執着してるから、リビエラ嬢がしている。リビエラ嬢。ダニエルは君がラウンディ嬢と仲良くすることを嫌だなんて思っていない。アレは、ラウンディ嬢第一主義だ。全てにおいてラウンディ嬢が優先されるんだ。ラウンディ嬢は君と友人になりたがっているから、ダニエルもそう望んでるよ」

 大公子息様の言葉に戸惑ったけれど、ラウンディ様がにっこりと微笑んでくれたので嘘じゃないみたい。
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