32 / 215
王太子殿下がちょっと、その
しおりを挟む
「僕の愛しのルージュに絡んだ娼婦がいるって?」
私は、マクラーレン王国の王太子殿下のお顔は存じ上げている。
シリウス殿下の婚約者時代に、一度お会いしたことがあるからだ。
だけど形式的な挨拶をしただけだから、単に顔を知っているに過ぎない。
だから・・・
目の前の光景に、ちょっと戸惑ってしまう。
べったりとラウンディ様に抱きつき、甘いんだか甘くないんだか分からない発言をされている方。
お会いした時より、その黒髪は少し伸びていて、その黒い瞳は鋭さを増しているけれど、間違いなく目の前の方は、マクラーレン王国王太子殿下ダニエル・マクラーレン様。
ええと。
あのリエナイ男爵令嬢様は、何をどう見てラウンディ様が王太子殿下に相手にされていないなんて思ったの?
二人が婚約者だと知らない子供が見ても、どう見ても王太子殿下はラウンディ様にゾッコンなのだけど。
不思議な気持ちになりながら、殿下や大公子息様たちを眺める。
大公様のご子息ルイス・ウイングバード様は、ため息を吐きながら王太子殿下の腕をポンポンと叩いた。
「学園内ではやめてやれよ。ラウンディ嬢がものすごく嫌そうな顔をしてるぞ」
「ルージュ、嫌なの?」
「い、嫌ではありませんわ。ただ、その恥ずかしいので人前では控えていただけると、その嬉しいですわ」
ラウンディ様の頬が赤くなっている。
どうしよう。とても可愛い。
なんだか、とても素敵なものを見せてもらった気持ちになるわ。
「良かった。嫌じゃないんだね?嫌だと言われたら、ルージュを監禁しちゃいそうだったからね。しかし、二人きりだと僕の制御が効くかな・・・」
「・・・怖いことをブツブツいうのはやめろ。リビエラ嬢が困っている」
「うん?ああ。ジュエル・リビエラ嬢、災難だったね。変なのに絡まれたみたいで。これから何かあれば、ルイスに言えばいいよ。僕でもいいけど、学年が違うからね。ルイスに言えば、僕にまで話は届くから」
「お気遣い、ありがとうございます。でも、私は結構タフですから大丈夫です」
王太子殿下は、ラウンディ様を巻き込んだこと、怒ってらっしゃるのかも。
ものすごく溺愛なさっているみたいだし、身分的にも私にラウンディ様のそばにいて欲しくないのかもしれないわ。
「ほらみろ。お前がラウンディ嬢に執着してるから、リビエラ嬢が誤解している。リビエラ嬢。ダニエルは君がラウンディ嬢と仲良くすることを嫌だなんて思っていない。アレは、ラウンディ嬢第一主義だ。全てにおいてラウンディ嬢が優先されるんだ。ラウンディ嬢は君と友人になりたがっているから、ダニエルもそう望んでるよ」
大公子息様の言葉に戸惑ったけれど、ラウンディ様がにっこりと微笑んでくれたので嘘じゃないみたい。
私は、マクラーレン王国の王太子殿下のお顔は存じ上げている。
シリウス殿下の婚約者時代に、一度お会いしたことがあるからだ。
だけど形式的な挨拶をしただけだから、単に顔を知っているに過ぎない。
だから・・・
目の前の光景に、ちょっと戸惑ってしまう。
べったりとラウンディ様に抱きつき、甘いんだか甘くないんだか分からない発言をされている方。
お会いした時より、その黒髪は少し伸びていて、その黒い瞳は鋭さを増しているけれど、間違いなく目の前の方は、マクラーレン王国王太子殿下ダニエル・マクラーレン様。
ええと。
あのリエナイ男爵令嬢様は、何をどう見てラウンディ様が王太子殿下に相手にされていないなんて思ったの?
二人が婚約者だと知らない子供が見ても、どう見ても王太子殿下はラウンディ様にゾッコンなのだけど。
不思議な気持ちになりながら、殿下や大公子息様たちを眺める。
大公様のご子息ルイス・ウイングバード様は、ため息を吐きながら王太子殿下の腕をポンポンと叩いた。
「学園内ではやめてやれよ。ラウンディ嬢がものすごく嫌そうな顔をしてるぞ」
「ルージュ、嫌なの?」
「い、嫌ではありませんわ。ただ、その恥ずかしいので人前では控えていただけると、その嬉しいですわ」
ラウンディ様の頬が赤くなっている。
どうしよう。とても可愛い。
なんだか、とても素敵なものを見せてもらった気持ちになるわ。
「良かった。嫌じゃないんだね?嫌だと言われたら、ルージュを監禁しちゃいそうだったからね。しかし、二人きりだと僕の制御が効くかな・・・」
「・・・怖いことをブツブツいうのはやめろ。リビエラ嬢が困っている」
「うん?ああ。ジュエル・リビエラ嬢、災難だったね。変なのに絡まれたみたいで。これから何かあれば、ルイスに言えばいいよ。僕でもいいけど、学年が違うからね。ルイスに言えば、僕にまで話は届くから」
「お気遣い、ありがとうございます。でも、私は結構タフですから大丈夫です」
王太子殿下は、ラウンディ様を巻き込んだこと、怒ってらっしゃるのかも。
ものすごく溺愛なさっているみたいだし、身分的にも私にラウンディ様のそばにいて欲しくないのかもしれないわ。
「ほらみろ。お前がラウンディ嬢に執着してるから、リビエラ嬢が誤解している。リビエラ嬢。ダニエルは君がラウンディ嬢と仲良くすることを嫌だなんて思っていない。アレは、ラウンディ嬢第一主義だ。全てにおいてラウンディ嬢が優先されるんだ。ラウンディ嬢は君と友人になりたがっているから、ダニエルもそう望んでるよ」
大公子息様の言葉に戸惑ったけれど、ラウンディ様がにっこりと微笑んでくれたので嘘じゃないみたい。
356
お気に入りに追加
4,749
あなたにおすすめの小説
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる