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叱責

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「何を騒いでいる?」

 冷ややかな声と共に現れたのは、青みを帯びた黒髪に黒曜石のような瞳の令息。

「あ!ルイス様ぁ」

「お前は誰の許可を得て、俺の名を口にしている」

 声を荒げているわけじゃない。
だけどその人は、凍てつくような冷ややかな声と、刺し殺しそうな瞳でご令嬢を見た。

「ひっ!」

 その、射殺しそうな視線と声に男爵令嬢は侯爵令息にしがみついた。

 ルイス?
王太子殿下とよく似たご容姿で、ルイス様・・・

 確か、マクラーレン王国国王陛下の弟様が大公様で、そのご子息がルイス様だったような・・・

「何があった?ラウンディ嬢」

「そこの常識も品位もない方が、ローゼン王国からの留学生に絡んでおりましたの。ですから少々、注意をしておりましたのよ」

 常識も品位もない・・・間違ってはいないわ。いないけど、ラウンディ様ってば真っ直ぐな方なのね。

 高位貴族は、遠回しな嫌味?を言うことが多い。
 それは、言葉尻で揚げ足を取られないためでもある。

 でも、ラウンディ様は違うみたい。
 ふふっ。こっちの方が好感が持てるわ。

「注意だけで、ダニエルの名が出ていた?」

「あの方、わたくしが殿下にと。名を呼ぶことを許されていないのだろうとおっしゃって」

「は?」

 大公ご子息は、呆れたような声を出すと、侯爵令息と男爵令嬢に視線を向ける。

「すごいな。品位と常識だけでなく、知能もないのか。フィヨルド侯爵令息。そこの品位も何もない令嬢をここからさっさと連れて行け。それから、勝手に俺やダニエルの名を呼ぶなとよく躾けておけ。いいな?」

「ちょ、ちょっと!ルイス様?なんでそんな目で私を見るんですか?私は、そこの女がレオン様に色目を使うから、注意しただけなんです!それをルージュ様がぁ・・・」

「ラウンディ公爵令嬢だ。それに・・・色目?」

 大公ご子息の視線が私に向いたけど、私は首を横に振った。

 私をいつでも守れるような位置で立つリラとララも、首を横に振る。

「ハァ。フィヨルド侯爵令息。自己評価が高いのは結構だが、周囲に迷惑をかけるな。それから、連れに二度と我々と関わらせるな。今回は伏せておくが、ダニエルの耳に入れば、タダでは済まないぞ」

「は、はい!行くよ、ドロシー」

「ちょ、ちょっと!レオン様?」

 フィヨルド侯爵令息様は慌てたように、ドロシーと呼ばれたリエナイ男爵令嬢様の手を取って、食堂から出て行かれた。

 あの会話から察するに、マクラーレン王国王太子殿下は、婚約者であるラウンディ公爵令嬢様を大切になさっているということね。

 そう考えて・・・
胸の奥がチクリと痛んだ。



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