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変な二人
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「ちょっと、あなた方。列に並ぶことすら出来ませんの?」
気付いた時には、令息と令嬢の前に立って文句を言っていた。
私の突然の行動に、お姉様も護衛の方も驚いていたし、令息と令嬢はポカンとしていたし、何より自分自身が驚いていた。
私は、伯爵令嬢でしかない。
ローゼン王国では王太子殿下の婚約者だったから、毅然とした態度を心がけていたけど、このマクラーレン王国ではただの他国の伯爵令嬢だ。
それなのに、まさか他国の貴族にこんな言葉をかけるなんて。
ポカンとしていた令嬢がいち早く正気に戻り、私に噛みついて来た。
「何よ!あなた。誰に向かってそんなこと言ってるのか分かってるの?」
「存じ上げませんわ。ですが、子供の前に割り込むなど、あまりにも情けないと思いませんの?」
「はぁ?あのねぇ、この方はフィヨルド侯爵家のレオン様よ!レオン様ぁ。この礼儀知らずな女に注意してやって下さい」
令嬢が令息に、侯爵令息って言ったかしらね、甘えたように腕にべったりとしなだれかかっている。
品がないわね。
それともマクラーレン王国では、婚約者同士ならこの距離感は許されるのかしら?
疑問に思ってお姉様を振り返ると、首を横に振られる。
あら?さすがに婚約者同士でもはしたないとされるのね。
令嬢に頼まれた・・・ええとフィヨルド侯爵令息?は、何故かジッと私を見ていたけど、ハッとしたように私から視線を令嬢に向けた。
「あ、ああ。ぼ、僕はフィヨルド侯爵家嫡男のレオンだ。君の名前は?」
「ジュエル・リビエラですわ」
「リビエラ?聞いたことがないな。まぁ、いい。僕に惹かれて声をかけて来たんだろう?君、なかなか可愛いし、かまってあげるよ」
「ちょっと!レオン様?私がいるのに!」
目の前で痴話喧嘩が始まるけど、意味がわからないわ。
何故、私がこの人に惹かれたなんて話になるの?
不細工とは思わないし、一般的には容姿は優れているのだろうけど、容姿だけでいうならシリウス殿下の方が優れてるわよ?
浮気嘘つき男と、自意識過剰のナルシスト男のどちらが上かと言われたら、どっちもどっちだけど。
ちなみに、ドーナツ屋への列は、私が彼らに話しかけたことで、どんどん先に進み子供達はドーナツを買えたようだ。
馬車から戻って来た護衛の方と交代して、残っていた護衛の方がお店の方へ誘導していたのよね。
子供が買えたのなら、もうこの方たちの相手はしなくても良いかしら?
私の考えを察したお姉様が、隣に並んで私の肩を抱いた。
「ジュエル。そろそろ次に行きましょうか」
「ちょ、ちょっと!私たちを無視するんじゃないわよ!」
「ドーナツを買うのじゃないのかしら?早く並んだほうがいいわよ?」
お姉様が列を指すと、すでに先ほどの子どもたちはドーナツを買って駆けて行った後だった。
令嬢と令息が列に意識を向けたのを見て、私たちはその場を後にする。
護衛の方が壁になって下さったので、彼女たちも追いかけては来なかった。
気付いた時には、令息と令嬢の前に立って文句を言っていた。
私の突然の行動に、お姉様も護衛の方も驚いていたし、令息と令嬢はポカンとしていたし、何より自分自身が驚いていた。
私は、伯爵令嬢でしかない。
ローゼン王国では王太子殿下の婚約者だったから、毅然とした態度を心がけていたけど、このマクラーレン王国ではただの他国の伯爵令嬢だ。
それなのに、まさか他国の貴族にこんな言葉をかけるなんて。
ポカンとしていた令嬢がいち早く正気に戻り、私に噛みついて来た。
「何よ!あなた。誰に向かってそんなこと言ってるのか分かってるの?」
「存じ上げませんわ。ですが、子供の前に割り込むなど、あまりにも情けないと思いませんの?」
「はぁ?あのねぇ、この方はフィヨルド侯爵家のレオン様よ!レオン様ぁ。この礼儀知らずな女に注意してやって下さい」
令嬢が令息に、侯爵令息って言ったかしらね、甘えたように腕にべったりとしなだれかかっている。
品がないわね。
それともマクラーレン王国では、婚約者同士ならこの距離感は許されるのかしら?
疑問に思ってお姉様を振り返ると、首を横に振られる。
あら?さすがに婚約者同士でもはしたないとされるのね。
令嬢に頼まれた・・・ええとフィヨルド侯爵令息?は、何故かジッと私を見ていたけど、ハッとしたように私から視線を令嬢に向けた。
「あ、ああ。ぼ、僕はフィヨルド侯爵家嫡男のレオンだ。君の名前は?」
「ジュエル・リビエラですわ」
「リビエラ?聞いたことがないな。まぁ、いい。僕に惹かれて声をかけて来たんだろう?君、なかなか可愛いし、かまってあげるよ」
「ちょっと!レオン様?私がいるのに!」
目の前で痴話喧嘩が始まるけど、意味がわからないわ。
何故、私がこの人に惹かれたなんて話になるの?
不細工とは思わないし、一般的には容姿は優れているのだろうけど、容姿だけでいうならシリウス殿下の方が優れてるわよ?
浮気嘘つき男と、自意識過剰のナルシスト男のどちらが上かと言われたら、どっちもどっちだけど。
ちなみに、ドーナツ屋への列は、私が彼らに話しかけたことで、どんどん先に進み子供達はドーナツを買えたようだ。
馬車から戻って来た護衛の方と交代して、残っていた護衛の方がお店の方へ誘導していたのよね。
子供が買えたのなら、もうこの方たちの相手はしなくても良いかしら?
私の考えを察したお姉様が、隣に並んで私の肩を抱いた。
「ジュエル。そろそろ次に行きましょうか」
「ちょ、ちょっと!私たちを無視するんじゃないわよ!」
「ドーナツを買うのじゃないのかしら?早く並んだほうがいいわよ?」
お姉様が列を指すと、すでに先ほどの子どもたちはドーナツを買って駆けて行った後だった。
令嬢と令息が列に意識を向けたのを見て、私たちはその場を後にする。
護衛の方が壁になって下さったので、彼女たちも追いかけては来なかった。
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