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ドーナツ屋

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 フレグランスお姉様と街に出かけることになった。

 マーガレット様が「ずるいわ」とおっしゃっていたので、今度ご一緒させていただくお約束をした。

 本当に、トライデント公爵家の方々はお優しい。

「お姉様!あれは何のお店?」

「ああ、あれは最近流行っているというドーナツ屋さんね。ふふふっ。ジュエル、楽しい?」

「あ・・・ごめんなさい。はしたなくして」

 お姉様に、人が並んでいるお店が何か聞くと、どーなっつというお店だと教えてくれた。

 平民の方が好むお菓子で、パンを揚げたようなものなのだとか。

 マクラーレン王国は、食の文化もローゼン王国より進んでいるのね。

 はしゃいで令嬢としては有り得なかったと謝れば、お姉様は私の髪を撫でてくれた。

「良いのよ。ここは、ローゼン王国でも王宮でもないのだから、楽しいことは楽しいと言っていいの。ドーナツ、食べてみる?」

「良いのですか?」

「もちろん。ルークたちの分もお土産にしましょう」

 お姉様と一緒に列に並ぶ。
護衛の方に申し訳なくて振り返ると、にっこりと微笑んで頷いてくれた。

「お姉様、皆様の分も買えるかしら?」

 さすがに買い占めたら、並んでる方に申し訳ないわ。

「大丈夫よ。ドーナツは一度にたくさん作られるから、たくさん買ってもすぐにまた並ぶわ。心配なら、店員さんに聞いてから買えば良いわ」

 店内に入ると、ショーケースにカラフルなリング状のお菓子が並んでいた。

 ピンクや茶色、白の色の付いたものや粉雪のようなものが降られているもの。

 可愛らしいどーなっつというものに、目が釘付けになる。

「全種類を十個ずつ欲しいのだけど、他の方の分は間に合うかしら?」

「大丈夫ですよ。ご注文分を裏で準備して参ります。そちらのお席でお待ちいただけますか?」

「ええ、お願いね」

 私がショーケースに見惚れているうちに、お姉様が注文してくださった。

 店内にある椅子に腰掛けてお客様の様子を見ていると、ほとんどのお客様は平民の方のようだった。

 それでも皆様、五個とか十個とか買われているし、お客様も途切れない。

 相当、人気のお店なのね。
帰って食べるのが、とっても楽しみだわ。

 大量に買ったドーナツは、護衛の方が馬車に積みに行って下さった。

 護衛は四人の方がご一緒してくれていたので、ひとり抜けても問題はないのだけど、先にいくのも悪いので、戻ってくるまでドーナツ屋の店の横で待つことにする。

 街行く人たちを眺めていると、ドーナツ屋の列に並んでいた小さな男の子と女の子の前に、貴族らしき令息と令嬢が割り込むのが見えた。


 
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