上 下
12 / 215

特別編:僕の女神〜ルーク視点〜

しおりを挟む
HOTランキング1位記念の特別編です。
皆様に感謝いたします。ありがとうございます😊
読まなくても本編に支障はありません。

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

次席か」

 学期末の試験結果。
貼り出された名前に、ため息がもれた。

 マクラーレン王国筆頭公爵家であるトライデント公爵家の次男坊、それが僕の立ち位置だ。

 僕のことを器用貧乏と言った人がいるが、言い得て妙だと思う。

 僕は剣も学業も、人並み以上に出来た。
 だけど、それだけだ。

 いつも、次点でしかない。

 そして、そのことにため息を吐きながらもそれを覆そうという熱量が僕にはない。

 僕には優秀な兄がいるので、トライデント公爵家を継ぐことはない。

 公爵家の子息として一定の成績を維持し、どこかに婿に行くか、それとも騎士爵を取るか、卒業までに決めれば良い。

「首席になりたいなんて思ってないくせに」

 その声に振り返ると、透き通るような銀髪をハーフアップにし、キラキラとした金の瞳で僕を睨んでいるご令嬢がいた。

 フレグランス・リビエラ。
ローゼン王国からの留学生で、ずっと僕の上に名前のあるご令嬢だ。

 女生徒に人気が高く、親衛隊までいるらしい。

 そんな彼女に、僕は苦笑まじりに答える。

「そんなことはないよ」

「嘘」

「嘘じゃないさ。渇望してもいないけど、首席になれば何か変わるかな、とは思ってるから、ちゃんと首席を取るつもりで頑張ってるよ?」

 僕に人に自慢出来ることがあるとすれば、この人当たりの良さと嘘を吐かないことだと思う。

 嘘を吐かない代わりに、当たり障りのない言葉と人当たりの良い笑顔や態度で無駄に敵を作らない。

 目の前の彼女と対称的な位置にいるのが僕だと思う。

 彼女は、物事をはっきり言う。
美人なこともあって、敵を作り易い。

 と、同時に彼女に魅了される令嬢も多い。

 令息より令嬢が多いのは、彼女の物言いがキツいせいだろう。

「なら、次の試験、私を抜かしてみなさいよ」

「抜いたら、何かくれるわけ?」

「は?何よ、それ。まぁ、いいわ。私にあげられるものならあげるわよ」

 別に何かが欲しいとか思ったわけじゃなかった。

 ただ、何気なく言ってしまっただけで・・・

 だけど彼女の返答を聞いて、僕の口から出たのは。

「なら僕が君を抜かしたら、僕と婚約してよ」

「・・・え?」

「約束ね」

 なんだか無性に首席になりたいと思えた。

 僕の大切で愛しい女神。

 あの時、彼女が僕を変えてくれた。
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

(完結)戦死したはずの愛しい婚約者が妻子を連れて戻って来ました。

青空一夏
恋愛
私は侯爵家の嫡男と婚約していた。でもこれは私が望んだことではなく、彼の方からの猛アタックだった。それでも私は彼と一緒にいるうちに彼を深く愛するようになった。 彼は戦地に赴きそこで戦死の通知が届き・・・・・・ これは死んだはずの婚約者が妻子を連れて戻って来たというお話。記憶喪失もの。ざまぁ、異世界中世ヨーロッパ風、ところどころ現代的表現ありのゆるふわ設定物語です。 おそらく5話程度のショートショートになる予定です。→すみません、短編に変更。5話で終われなさそうです。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

私はあなたの何番目ですか?

ましろ
恋愛
医療魔法士ルシアの恋人セシリオは王女の専属護衛騎士。王女はひと月後には隣国の王子のもとへ嫁ぐ。無事輿入れが終わったら結婚しようと約束していた。 しかし、隣国の情勢不安が騒がれだした。不安に怯える王女は、セシリオに1年だけ一緒に来てほしいと懇願した。 基本ご都合主義。R15は保険です。

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

処理中です...