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最終話②

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 本当なら、私ひとりでハイドランジア帝国に来る予定だった。
 だから、皇宮にお世話になる予定だったのだけど・・・

 お父様お母様がご一緒してくれて、しかも帝国で侯爵位を賜ったことで、皇太子妃教育は通いで行うことになった。

 他国では王宮で暮らして教育を行う国もあるけど、私はせっかく同じ国にいられるなら、婚姻までは家族と暮らしたい、そう願った。

 ユリウス様は渋々・・・本当に渋々だったわ、許可してくださったのだけど、その分、私への溺愛ぶりが加速した気がする。

 恥ずかしいけど、私の願いは優先して叶えてくださるユリウス様のことは大好きだから、私も少しは譲歩しないとね。

 ジョエル殿下・・・弟のジョエルは、お父様お母様、そして私と仲良くアマランス侯爵家で暮らしている。

 先王陛下とよく似た、穏やかな性格のジョエルは、ユリウス様にもとても懐いている。

 最初の頃は、自分だけ生き残ったことを随分と気にしていた。

 自分にも王家の歪んだ血が流れているからって。

 ジュエルの協力のもと、過去の歴史を調べたの。

 セレスが生きていた頃の王家のこと。

 やっぱり、エルムンド殿下とジュリエット様は結婚していた。

 子供は王女を二人産んでいて、その第二王女がエルム殿下やジョエルの先祖だった。

 カメリア男爵家は、野盗に襲われて家人は死亡。

 コパー子爵家は、子息のリウスが王太子殿下の婚約者に懸想し乱暴しようとした罪で子爵と子息共々処刑、とあった。

 冤罪じゃない!
リウスがジュリエット様に乱暴するわけがない。

 それでもきっと、当時の国王陛下も王妃殿下もエルムンド殿下とジュリエット様の言葉を信じたんだろう。

 ところが、その二人の娘である第一王女が両親の話に不信感を持った。

 お父様が逃したカメリア男爵家の使用人と連絡を取って、両親を断罪しようとしたらしい。

 結局、その第一王女もあの二人に殺されてしまったのだと思う。
 病死と書かれていたけれど。

 だけど、国外に逃げていたカメリア男爵家の使用人が、私のことやリウスのこと、その第一王女のことなどを噂で広めたようなの。

 王族を侮辱したと不敬で罰せられるところだけど、他国で広がったから王家は後手に回ったみたい。

 その話を聞いて、改めて思ったわ。

 エルムンド殿下たちの血が悪いんじゃない。
 その人その人の、本人の資質の問題なのよ。

 だから、ジョエルにも言ったの。
血なんか関係ないって。

 大切なのは、自分がどう生きるか。どう考えるかだって。

 自分だけじゃなく、誰かを、周りを大切に思えたら、あんな風にはならないって。

 だってあの二人の子供が、親を断罪しようと思うくらいマトモだったんでしょ?
 なら、血なんかじゃないわ。
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