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最終話①

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「セレスティーナ様。少し休憩されてはいかがですか?」

「そうね、ありがとう」

 私はペンを置くと、背筋をギュッと伸ばして立ち上がった。

 本当は腕を伸ばして体を解したい。
でも、行儀が悪いから人前では出来ないわ。

 私は十三歳になった。
現在、ハイドランジア帝国の皇宮で皇太子妃教育を受けている。

 本来なら十一歳から通う予定だった学園には、試験の時にしか通えていない。

 ユリウス様と婚姻するのは、私が成人する十六歳を待ってからだけど、皇太子妃教育に皇妃教育と時間がいくらあっても足りなくて、断念せざるを得なかった。

 セレスティーナとして目覚めてから、公爵令嬢としていくらか高位貴族としてのマナーなどは学んだけど、まだまだ追いつかない。

 普通は皇太子妃教育だけで、婚姻してから皇妃教育を受けるんだけど、私が婚姻する相手はすでに皇帝陛下。

 とにかく十六歳までに、詰め込めるだけ詰め込まなきゃならない。

「セレスティーナ様。皇帝陛下がお見えになりました」

「あら?すぐにお通しして」

「セレス」

 侍女に返事を返した途端に、部屋の扉が開いてユリウス様が入って来た。

「・・・ユリウス様。すぐにお通ししてとは言いましたが、扉が開くのを待ってからにして下さいませ」

「・・・すまなかった」

 しゅんとするユリウス様の頭にへにゃんとした耳と、お尻に垂れたシッポが見えるわ。

 冷酷だと噂のユリウス様だけど、私はそんなお姿を見たことがない。

 いつもいつもお優しくて、私に甘いユリウス様。

 私はユリウス様の手にそっと手を触れると、にっこりと笑った。

「ちょうど休憩しようということになっていたんです。お茶をいただきましょう?」

 この国の皇帝陛下であるユリウス様。
この皇宮もユリウス様が幼い頃から過ごされていた場所で、当然のことながらユリウス様に入ってはいけない場所などない。

 だからか、私が皇太子妃教育を受けている部屋にもなんの前触れもなくいきなりやって来て、ノックもなく扉が開いた。

 教育を受けている部屋で着替えていることなどはないけれど・・・

 さすがに眉をしかめてしまったわ。

 昔・・・セレスだった頃に、お母様やリウスのお母様に叱られていたようにユリウス様を叱ってしまった。

「ユリウス様。いくら皇帝陛下といえど、許可なく扉を開けるのはいかがなものかと思います。それに、ノックもなく開けるなど、マナーがなっていないのでは?」

 ユリウス様は十歳の時に即位されているし、ご両親も他界されている。

 厳しいことを言う人はいなかったのかもしれないし、アマランス公爵家に来ていた頃は礼儀正しかったから・・・

 礼儀正しかったかしら?
私を膝の上に乗せていたけど。

 アーンでお菓子とか食べていたけど。

 ・・・考えては駄目ね。
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