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セレスティーナ10歳(12)

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「離れろ!は僕のだ!」

 エルム殿下の言葉に、背筋がヒヤリとした。

 気持ち悪い。まるで言動がリウスを殺したあの男みたい。

 あまりの気持ち悪さに、ユリウス様にしがみつくように背中に手を回した。

 私が生まれ変わったように、あの男も生まれ変わったんじゃないでしょうね?

 それともあの男の子孫だから、似たような言動なの?

「ぎゃあああああ!」

 突然の悲鳴に振り返ると、腕が落ちていた。

 え?腕?

 視線の先には、ユリウス様の護衛騎士のロイド様の背中が見えた・・・と思ったら、すぐにユリウス様に抱き込まれる。

「ユリウス様?」

「汚いからセレスは見なくて良いよ。耳も塞ごうか」

「塞いでもいいですけど、アレって誰のですか?」

 喚く声からして、多分エルム殿下のだと思うけど、もしかしてロイド様が斬り飛ばしたのかしら?

「セレスに手を伸ばして来たから、ロイドがエルム・フォレストの右腕を斬り飛ばした」

「ああ。やっぱり」

「怖くないかい?」

 怖い?ロイド様のことを?

 ユリウス様に抱きしめられている私に、手を伸ばそうとしたのでしょう?

 それなら当然の結末だと思うの。

 ユリウス様に危害を加えようとしていると思われても仕方ない行為だもの。

 それに、私はこの国の公爵令嬢だけど、ハイドランジア帝国皇帝陛下の婚約者でもある。

 王子とはいえ、容易く触れていいわけないのよ。

 ぎゃあぎゃあと煩い悲鳴を聞きながら、私は小首を傾げた。

「ロイド様のこと?」

「いや、腕を斬ったことだよ」

「ロイド様のお仕事ですもの」

 それに、腕一本でしょう?さすがに生首が転がって来たら驚くけど。

 エルム殿下がエルムンド殿下じゃないことは理解っているけど、言動が同じだから同情する気にもならないわ。

 あなたの先祖はね、私の大切な人を惨殺したのよ。

 リウスに傷のないところなんてなかった。

 両目を抉られ、両足を斬られ、打撲痕だってあったと思う。

 きっと、気絶することすら許されずに拷問されたのよ。

 私はあなたの先祖を許さない。

 それでも・・・子孫だからって恨みを晴らすつもりはなかった。

 私が憎いのは、リウスや父様母様を殺したエルムンド殿下と、それを許した国王陛下と王妃殿下だもの。

 でも、彼らと同じ行いをするのなら、こんな国、滅んでしまえばいいのよ。

「ダンスは踊れそうにありませんね。公爵家に帰りましょう?」

「ああ、そうだな。アマランス公爵。後を任せても良いだろうか?」

「もちろんです。娘をよろしくお願いします」

 後始末をお父様と、ロイド様にお任せして、お母様と一緒に帰ることにした。

 なんだか疲れちゃったわ。
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